かざみきもの学院
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<2007年9月>

 

大人が学ぶ

学院長  私は、時々テレビをつけたまま仕事をすることがあります。見ているのではなく、なんとなく聞いていて、興味のあるところは見てしまいます。そして、感動したり共感する言葉があったときは、その場でメモをします。

 先日、聞こえてきた言葉に「ワー!ヤバイ!」「チョーウメー」という声が聞こえました。まだ声変わりをしていない男の子の声でした。こんな子供も、今はこういう言葉(?)をかっこいいと思って真似るのかなあと思い、顔を上げて画面を見ると、確かに男の子が居たのですが、こう言っているのは、お母さんの方でした。何かを試食したときのことです。目を疑いもう一度見ました。とてもそんな言葉が出るような感じではなく、外見はきれいな女性でした。

 どんな時代でも乱暴な言葉はありますが、一番怖いと思ったのは、普通の女性が、普通だと思って、いえ、先端を行っているかっこいい言葉だと思っていることです。
今は、お笑いの人が出る色々な番組を筆頭に、ドラマでも、こういう言葉のやり取りで、展開していくものが多くなったように思います。中高生の間では、短縮語、造語が流行し、大人もその言葉が分ると、子供を理解しているというような風潮があります。

 最近、大人が子供たちに迎合しているように思います。もちろん本当に一生懸命取り組んでいる人たちも大勢おられますが、多くは、子供たちの表面を理解するか、今の子は・・と批判をするかで、内面を理解しようとしていないように思います。

 政治の世界でも、国民は不安だから、自分たちのことを一番に考えてくれる強いリーダーを求めているのと同じように、子供もまた毅然としてぶれない大人を求めています。
子供たちは不安なのです。不安だから、良いにしろ、悪いにしろ、とにかくみんなと同じ行動をとるのです。子供に考えさせることは大切ですが、大人が、人として大切なことは、シンプルにはっきりと、言い切る強さが必要ではないかと思います。基本的なことは、できるだけ小さいときからです。
親が、人として一番大切なところで、ぶれないことが子育ての基本です。

 もう一つ、大人自身が、人として、男として、女として、輝いていることが大切です。
大人が不安になって、世の中が悪い国が悪いと不満ばかり言っていると、子供が将来に夢を持つのは難しいことです。これはマイナスのことをオーバーに言いすぎるマスコミの責任も大きいと思います。

 これまで日本はいつも豊かであったわけではありません。
けれども、その時そのとき、みんな工夫をして少しでも、明るい家庭を作ろうとしていました。子供たちの枝葉は面倒見られなくても、幹の部分、大切なことはしっかり教えました。話が理解できるような年齢になれば、お父さん(お母さん)が、何かの機会に、自分が歩いてきた道を話し、嬉しかったこと、感動したこと、この仕事をしてきたことの満足感等、具体的に話していくと、誇りをもって働き、生きてきた親が、大きく素敵に見えてきます。そして自分の将来のことも前向きに真剣に考えるようになるはずです。
 
《 作法教室開講 》

 松山校では来月( 10月 )から、作法教室を開講します。2段階に分けて基本現代作法 とエレガンス作法です。
基本現代作法は、言い換えれば、「ですます体」の作法です。丁寧さの度合いで、真・行・草 と言う言葉を使いますが、お辞儀では、「真礼」(丁寧なお辞儀)・「行礼」(普通のお辞儀)・「草礼」(会釈) となりますが、その動きには言葉がつきます。真の動作には「ございます」、行の動作には「ですます」、・・・。

 私が基本現代作法で求めるものは、「ですます体」の作法です。これは言い換えれば、人として普通の、恥をかかない、常識的な動作と言葉です。大人の方はそれくらい分っていると言われるかもしれませんが、自分が分っているだけではなく、そのことは自分の子供はもちろん、その他の若い人達に、何らかの形で教えていくことが大切な役割になります。

 何年か前、成人式のお嬢さんの着付に、熱心なお母さんが一緒に来られて、着付、帯結びのご注文を色々言っておられたのですが、お嬢さんが、足袋を履けなくて、着付士が履かせたのを見て、「恥ずかしい・・・」と一言。その後、何も注文もなくすべて任せていただいたと着付士から報告を受けたことがあります。このお母さんは、そんなことくらいできると思っていたのが、違っていたことがショックだったのかもしれません。
でも、この方は親の責任ということをしっかり自覚している方なので、ご自分を恥じておられたのです。そう感じられるお母さんは立派な方だと思います。

 普通は、ですます体の動きと言葉を使うけれど、ございます体の引き出しを持っていて、状況に応じて使える。というのがもう一つ上の素敵な女性の条件にもなります。
丁寧すぎる動作や言葉は、時には相手に負担をかけることもあります。
和室に若い方をお迎えしたとき、「お楽にどうぞ。」と声を掛けるのが作法のこころです。長く正座できないのが普通と考えて、対処します。正座をする方は、できないのが普通、当たり前と考えないで、日本人である限り、しびれにくい、疲れないコツなど知っておいて、ある程度は正座できるようにしておくことも必要です。

 ここでは、「人として恥をかかないように」から「自信を持って行動できる」へ。
基本の動作 物の扱い 冠婚葬祭 贈答 言葉 通信 会話 敬語 茶菓 食事マナー 等を学ぶことで、作法の原点は「相手の立場で考える」ということを再認識することと思います。また、教え方のコツもあわせて学びます。

 この「基本現代作法」が終わると、「エレガンス作法」です。

 子供に「ガンバッテ!」というより、大人が楽しく学ぶ後姿を見せる方が、子供は頑張ります。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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