きものの話・・お太鼓
猛暑の夏も過ぎ、着物を着るのが楽しい季節になってきました。今度は成人式の着付けのことで、それぞれ新しく帯結びを考え練習をする時期でもあります。
成人式の振袖は、年々華やかに着物にも頭にも色々なものをつけて精一杯おしゃれをするようです。
それはそれとして、普通の着物を着る時一番は何と言っても「お太鼓」です。着付教室の先生は色々な帯結びは教えますが、ほとんどの人が、自分は「お太鼓」「二重太鼓」を結びます。ミセスでは一番上品で格調の高いものでもあることに加えて、お太鼓は日常の生活をするのに一番いいからです。車に乗っても椅子にかけても気にならない。帯をすると背筋が伸びて姿勢がよくなります。立っていても座っていても、上半身がまっすぐになります。
さて、現在一番多く結ばれる、お太鼓・二重太鼓は、 名古屋帯・袋帯はいつごろできたのでしょう。着付けの勉強をしている方はご存じと思いますが、一般の方にも身近に感じていただくために、分かりやすく基本的なことをあげてみます。
名古屋帯は大正時代、名古屋女学校の創始者、越原春子氏が考案されたもので、京都で大量生産され、それがまた名古屋にわたり、「名古屋帯」として売り出され、軽くて結びやすいので大流行し、現在に至っています。
もうひとつ「なごやおび」があります。これは「名護屋帯」と書き、肥前( 佐賀県 )、名護屋から生まれたもので、桃山時代、紅 白 青 金 等、鮮やかな色の絹糸を編み込んだ細長いもので、両端には長い房をつけ、ぐるぐる巻いて垂らしたもので今の名古屋帯とは別のものです。
袋帯はやはりこのころ、丸帯に代わって流行しました。丸帯は幅の広い帯地を幅半分に折って縫い合わせ、芯を入れて作ったもので、片方だけ縫い目があります。帆布を入れたものが多く、厚く、重く、扱いにくく、また何より両面通しなので高価なものでした。江戸の時代劇に出てくる昼夜帯は、裏が黒繻子表に柄があり、結ぶ時に上側で裏の黒を少し折り返して結びます。帯結びは角出し(帯締めを使わない)です。これに対して丸帯は「高価なもの」意識が強く、関東芸者は帯を「柳」、関西芸者は丸帯で「角出し」ということですが、丸帯でも昼夜帯のように上を外に折り返したのは、高価な丸帯を使ってますよと見せたと、以前時代衣裳の着付けの先生に教わったのを思い出します。
戦後はほとんど袋帯になり、袋状に織った物(本袋)が主流でしたが、最近では表裏別に織り、縫い合わせたものが多く、柄も片面、六通(全部に柄がなく一巻き目は無地)の経済的で結びやすいものが多くなりました。丸帯は婚礼衣装等に使われますが、変わり結びがしやすいように芯も薄くなり扱いやすくなっています。
「お太鼓結び」は江戸亀戸天神、太鼓橋再建落成の時、深川芸者が太鼓橋にちなんで下げている帯を折り上げ留めたことからお太鼓結びと言われるようになりました。また、お太鼓の形をきれいにするため帯枕を、合わせて帯締め(丸ぐけ) 帯揚げもする現在のお太鼓結びになりました。
名古屋帯では一重太鼓、袋帯では二重太鼓に、二枚重ねは丁寧でお祝いには最適ですが、喪服の黒共帯は、繰り返す意味があるので二重太鼓ではなく一重太鼓(お太鼓)を結びます。
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