『かざみ』と梅
松山も、開花の遅れた今年の桜はパッと咲いてあっという間に散ってしまいました。
この4月からNHK朝のテレビ小説「梅ちゃん先生」が始まりました。3人兄弟の長女が松子 次の男の子が竹夫 末のヒロインの女の子が梅子。ある時、何でも松竹梅というとランクを決めていく時、梅は一番下であることで不満だった梅子に、お姉さんの亡くなった婚約者が言った言葉が、回想で何度か出てきます。「梅は一番に咲く花・・・・・」
私が書き始めた万華鏡の第1回目にこのことを書いています。かざみきもの学院のマークは家紋帳にもある梅の花です。一大決心をして始めた学院ではなく、好きで始めた着付け教室でしたが、ある時、生徒さんが資格をとり連鎖校を開く頃になって、統一の名前がほしいとの希望が出てきました。それを受けて、真剣に名前を考えました。みんなの教室の名前の頭につけるので、邪魔をしない、ひらがな3文字、これだけは考えていましたが、人一倍言葉にこだわる私は本当に悩みました。
本は女装史、万葉集 古今和歌集・・・等 花の本その他色々の本を見て探しました。今ならネットでもっと簡単に探せますが、当時はこの方法しかありませんでした。
連鎖校の名前をつけなければいけない期限があり、ある時、一度も利用したことのない、近くの図書館に行きました。花の本の中で梅の所を見ていた時、梅の色々な別称に出会いました。お線香の名前にもなっている「好文木」とか百花の中で一番に咲き、春の訪れを告げる「春告草」くらいは知っていましたが、その他色々ありました。その中に、「香散見草」という言葉がありました。「香散見」を「かざみ」と読むところになぜか惹かれました。
その時、服飾史で勉強した童女の礼装「汗衫(かざみ)」のことを思い出しました。このことへの特別のこだわりはありませんでしたが、ちょっと嬉しくなりました。そういう訳でかざみきもの学院の名前がついたのですが、私は、着物と同時に女性の生き方について興味がありましたので、改めて考えてみました。
かざみは「風見」とも書き、風を見るという意味もあります。某元総理が「風見鶏」などといわれてあまり良い意味に使われないような時もありましたが、私は、作法を含めて大人の女性を目指して皆で勉強している時、これを、「広くは世の中の流れを知ることと、狭くは、その時の状況を瞬時に察知し、その時々の対応ができること。(作法も時と場合によっては丁寧すぎると相手に対して失礼な時もある)」
としました。
かざみの意味に風を見るが入りました。「風」はまた私の好きな言葉です。木々や花から季節の変化が分かりますが、「風の匂い風の色」この言葉が分かる繊細な感性を持っていたい。これも目指す大人の女性です。
松山の三番町通りを歩いていて、観音寺の外に書かれている言葉が目にとまりました。
「梅の花 花は散っても実を残す」 これは正確ではないかもしれません。こんな感じの正確なものがないか調べていたところ、海上保安庁の所に到達しました。制帽には梅の花がデザインされています。初代海上保安庁長官が「梅は艱難の中に花を咲かせ清香を放ち、花が散っても実を残し、その実は息長く常に国民と共に生きている。・・・」と話されたそうです。
確かに以前色々調べた中でも、昔から、桜は花見 酔っ払い 散る などとあまりいい表現は少ないのに比べ、梅は「好文木」が中国の武帝が学問に親しむと咲き、やめると咲かないという意味から見ても、
また、現在でも学問の神様として、京都の北野天満宮 福岡の大宰府天満宮 東京の湯島天神、また大宰府天満宮の飛び梅の木で道真公の像を彫り祀ったという 亀戸天神など、梅は学問と関係が深く、良い意味に使われます。
入学試験の合格祈願に行く人が多いようですが、梅を愛した学問の神様、菅原道真公のことは頭に入れていてほしいと思います。余談ですが、天神様のお使いとしての牛は「撫で牛」と呼ばれ、頭を撫でると頭が良くなると言われています。
とは言え、桜の開花は各地で待ち焦がれ、散る時もハラハラと舞う様は美しく、桜も大好きで、お花見にも行きました。今は、枯れたと思えるような木に新芽が出て一日一日大きくなっていくのを見て、日本の四季の素晴らしさと、植物の生命力を感じます。木々の緑が萌え、風薫る5月になりました。
梅はまた「風待草」とも言われます。
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