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<2014年10月>

 

お彼岸に・・・

 今年も秋のお彼岸には彼岸花が咲きました。彼岸花はカレンダーを見ているかのように、不思議なほどその頃には咲きます。彼岸花については前に書きましたが、 毎年この季節になると考えます。

 ある新婚さんから 「8月にお盆でお墓参りしたのに、9月にまたお彼岸でお墓参り。どう違うのか?」 という言葉がありました。こういうことは、家を継ぎ先祖の供養をしている人が子供、孫へと代々教え伝えていくもので、それができない時はその地域の年長者が教えていったものですが、昨今では仕事やその他色々な事情で別のところに住み、周りの人との交流もないので、教えてくれる人もなく、(知ろうともせず) 葬儀になって戸惑い、葬儀社やお寺のご住職に教えてもらうというのが現状のようです。

 多くの方はご存知とは思いますが、こういう疑問を持った人がおられるので、ここで簡単に彼岸のことを書いてみます。 「彼岸」 は亡くなった人が生死の間をさまよい、修業期間を経て向こう岸にある、迷いを脱した悟りの境地、西方浄土を言います。それに対し我々の居る煩悩と迷いの世界は 「此岸(しがん)」 と言って、東にあります。 お彼岸は春と秋の、春分の日、秋分の日を指します。その日を中心に前後3日ずつ計7日が彼岸で、初めの日を 「彼岸の入り」、終わりを 「彼岸明け」 といいます。春分の日、秋分の日は昼と夜の長さが同じで、太陽が真東から出て真西に沈むのでもっとも通じやすい時と考えこの時、特にお墓参り等先祖供養をします。極楽浄土は西にあると考えるので、それぞれ事情があり、遠くに居て、お墓参りに行けない人も、この日、太陽が沈む方向に向かって手を合わせるといいと言われます。余談ですが、墓地のお墓の値段も西を背にしているほうが西に向かって手を合わせることになるので高いというのもここから来ています。

 よくクイズに出る 「おはぎ」 と 「ぼたもち」 の違いについては、牡丹の季節の春のお彼岸は 「ぼたもち」、萩の季節の秋のお彼岸は 「おはぎ」 というのはご存知の方も多いと思います。小豆の赤い色が邪気を払う、おもちは五穀豊穣、甘いものは貴重で特別の日にふるまうことから来たとのこと。また、秋は小豆がとれたてで、皮が柔らかいので粒あんに、春は硬くなるので皮をとってこしあんにするのが多いようです。さらに、春は牡丹のように大きく、秋は萩をイメージして小ぶりにとこだわる人もあります。

 最近では、お墓もなかなか作ることもできず、マンションのようなお墓が出てきたときは驚きましたが、日本の限りある土地を考えると、ロッカー式 「納骨堂」 も仕方がないことかもしれません。我が家もお墓は買っていましたが、私が松山に居ることが多いので、ご住職にご相談して、もう一つ小さい仏壇を松山にというアドバイスをいただき、二つ開眼供養をしていただき松山にも置いています。

 質問にあったお彼岸とお盆の違いを簡単に言うと、お盆は亡くなった人の霊が、あの世から帰ってくることです。13日には迎え火、16日は送り火、その間はお家に居ますのでできるだけ留守をしないように。迎え火も、霊が迷わないように目印のため家の前でおがら (代用で小枝割り箸等) を焚いたものですが、今では火災予防の面でそれはできません。お寺に提灯を持って迎え火をいただくのですが、これも、車に乗ったら火を消して、降りる時に点けて下さいと言われています。迎え火・送り火をはじめその他のことは、浄土真宗など宗派や地方によって考え方が違うところもありますので、その限りではありません。迎え火・送り火はしなくてもお彼岸の時期には形がどうであれ、故人を偲び供養をすることが大切です。我が家は、次女が群馬に居ることが多く、命日だけではなく、誕生日、父の日もお墓参りに行ってくれているようです。それは本人の気持ちの問題ですので、とても感謝しています。

 私も今でも分からないことが多いですが、夫のことがなければ今の若い方たちと同じかもしれません。ただ小さい時から、生まれた時には祖父も祖母も他界していて、会ったことがなかったので実感はありませんでしたが、分からないままに親のするとおり真似て、仏壇やお墓の前で手を合わせていたのを覚えています。今思うとこのことはとても大切なことですし、お子さんがおじいちゃんおばあちゃん、知っている人が亡くなった後は、案外小さい時でも分かりやすく話してあげると なんとなく理解できます。

 大体のことが分かった上で、大切なのは気持ちの問題なので、お盆やお彼岸のお墓参りのそういう機会にお子さんの年齢に合わせて理解できるようにお話してあげるといいと思います。最近、子供も大人も普通では理解できないような凶悪な問題が多いように思いますが、お盆やお彼岸など大切にしているお家のお子さんは、人として一番大切な 「軸」 の形成ができ、命の大切さや、人の立場で考えられる強く優しい素敵な大人になることと思います。お盆にきゅうりの馬となすの牛を作りますが、来る時は馬に乗って早く来てほしい、帰る時は牛に乗ってゆっくり。名残惜しい気持ちを表しています。お子さんとそんなことを話しながら一緒につくるのもいいと思います。

 《参考》 万華鏡 「お盆と七日裁判」 2010年8月  「彼岸花」 2010 年10月


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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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