たし算ひき算・シンプルイズベスト
1月、誕生日にと娘達が送ってくれた、蕾をいっぱいつけたカサブランカも、次々咲く花の花粉対策が日課になっていましたが、おかげで随分長持ちし楽しみました。それも終わり、小さい備前の壺に庭に咲く花と、この時期でも緑の葉を持っている別の木の枝先を合わせて入れました。何かの時は、大きくて華やかな花ももちろん大好きですが、日常は、庭に咲いた花を控えめに生けるのが私の希望です。残念ながら、松山ではマンションなので、なかなか思うようにはいきませんが・・・
成人式は今年も大勢の依頼があり、着付士は早朝から頑張り無事終わりました。
11月、12月頃になると、成人式着付けのために、授業に出てくる人たちも居て、着付士プロ科の授業はほとんど振袖になります。実際の着付けはその方の体型、着物、帯の長さ、小物等それぞれ違うので、その都度アレンジができるアイデアと技術が必要になってきます。しばらく関わっていなかった人は、基本の確認が必要な場合もあります。また、仕上がりの複雑な帯結びの場合によく言うことですが、「作った羽根がぶつかり合い喧嘩をする状態の時は、全体のバランスを見ると分かるので、どちらかを表面に、どちらかを内側にはっきり決めること」。これは花を生ける時、葉がぶつかってスッキリしない時はどちらかを切り落とすのと同じ。それらのことも考えて、それぞれの技術と感性で仕上げていきます。
終わって次の研究会には、それぞれの報告と、思いもかけないことがあったりすると、皆で共有して、対処の仕方をさらに勉強します。中にはどうしても、着物の身幅が足りず、どう考えてもきれいに仕上がらない場合があります。私は以前、講談社の 「きものと着つけ」 の本で15年間仕事をしましたが、毎年、着方着せ方、新しい帯結び等をした中で、こちらの希望で企画していただいた 「ふくよか体型の人の悩みを解決 スッキリ着付けのポイント」 として出された中の一つで、身幅の足りない人の下前の工夫として説明しました。松山でも研究会でしていましたので、対処できてお客様にとても喜んでいただけたようです。
成人式の振袖は、花や小物等気になることもありますが、成人式に限っては、多くの人が着るので、これもその時の流行の一つと考え、肩出し着付けのようなものは別として対応できるようにしています。本当は着物姿にお花や帯揚げ帯締め等、小物を沢山盛っていくより、歩き方、袂の扱い お手洗い 食事の時は と着こなすことを知っている人の方が、その人自身が美しく素敵に見えることを、いつか気づいてくれると信じることにしました。
ただ、これだけはマナーとして心得ておいてほしいのは、同じ振袖でも、友達や家族親戚の結婚式の場合には、花嫁が主役なので、必要以上に飾りたてないということです。振袖だけで充分目立つしきれいですから、控えめで上品な着付けになるよう注意して下さい。洋装でも白は花嫁の色なので、他の人は控えるというマナーもあります。
余談ですが最近あるあるアンケートで、20代の男性に聞く、「女性のいいなと思うところ 嫌だと思うところ」 が出ていました。女性がきれいに見せるために一生懸命になっている所と、男性が求めるものは相反するところが多いという結果が出ていました。
私がこの道に入ったのは大人の女性への憧れからということは何度も書いていますが、実際に仕事をするようになっても、自分には出来ないけれど憧れている着物姿の女性があります。それは料亭の女将です。着物は控えめで、江戸小紋やそれに近い、目立ちすぎないような着物で、髪もお化粧も派手すぎず、凛として機敏に動くのに穏やかな所作と笑顔。自分が主役ではないことは何より知っています。また、初めてでもお客様の立場をすぐ理解しているのには驚きがあります。
お話は変わりますが、『シンプルイズベスト』 この言葉は今や日本語のようによく使われます。私も大好きな言葉で、何度も使ってきました。また 「シンプルライフ」 という言葉も断捨離と合わせて流行っているようです。
今、私が言っているのは、物のことだけではなく、考え方のことです。 「シンプル」 は単純 簡素 等ありますが、何も知らない 何も聞かない 自分流 とは違って、世の中のこと、他の人の考え等も、色々なことを欲張って吸収して、それから取捨選択をして捨てていき、色々なことに惑わされることなく、シンプルに自分らしく生きることだと思っています。そのことはまさに 「たし算とひき算から」 とも言えます。
ここで忘れてはならないことは、その時捨てたものの中には、後でとても大切なことだったことに気づくことがあります。実際の物とは違って考え方は場所を取りません。自分の中のどこかにしまっておいた方がいいかもしれません。別の意味で、そのことも含めてその人の歩いてきた道になります。
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