かざみきもの学院
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<2006年4月>

 

着物が教えてくれること

学院長 今年も成人式の振袖の着付け、3月は卒業式の袴の着付も終わり、それぞれ着付士の皆さんは、一段落というところでしょう。
今年、多かったのは、お嬢さんが足袋を履けないということです。
以前にも足袋を履けなくて、一緒に来られたお母様が、「足袋が履けないなんて思ってなかった。恥ずかしい・・」といわれたと聞いたことがありますが、今年は、履き方は知っているけれど、着付士が見るに見かねて履かせてあげた。という人が多かったのです。それはネイルアートが流行っていて、長いアートの付け爪のため、こはぜがとめられないのです。

以前、着付士が美容室からの依頼で行ったときのことです。かざみきもの学院では、振袖等 着物を着なれていない方の着付けは、当日できるだけ早く着付けができるように、前日に、チェックに伺うようにしています。足りないものがあったり、しつけがついていたり、半衿がついていないこととかいろいろなことがありますが、ある時、前に着たまま、たたまないで、紙袋に入れていた方がありました。着付士が、美容室に了解を得て、持ち帰ってアイロンをかけたのですが、着付けより時間がかかったという報告を受けたことがあります。

また生徒さんから聞いたお話ですが、知人の方がお嬢さんの成人式も終わって、1月も終わろうとしている頃、「呉服屋さんがまだ着物をたたみに来てくれないの・・」とのこと。本人はもちろん、お母様もたためない。今こんな時代になったのかと、考えさせられるものがありました。

お話は変わりますが・・・着物からきた日常の言葉がいろいろあります。思いつくままにあげてみます。
  「衿を正す」 ・・・気持ちをひきしめて物事にあたる態度
  「胸衿を開く」 ・・・心中を隠さずに打ち解ける
  「袖の下」 ・・・わいろ 心づけ
  「袖にする」 ・・・ないがしろにする 
  「袖を濡らす」 ・・・涙を流して泣く
  「袖を絞る」 ・・・涙に濡れた袖を絞る
  「袖にすがる」 ・・・哀れみを乞う
  「袂を分かつ」 ・・・今迄一緒だった人と関係を絶つ それぞれ別の道を行く
  「帯に短し たすきに長し」 ・・・物事が中途半端で何の役にもたたない
  「無い袖は振れぬ」 ・・・無いものは出したくても出しようがない、
                力が足りないのに何かをしようとしても無理

余談ですが・・・着物の裾の両端の部分を「褄」といいます。
「つじつまが合わない」という言葉がありますが、もとは裁縫用語で、「つじ」は、縫い目が十文字に合うところを指し、「つま」は着物の褄からきています。矛盾するという意味に使われます。

芸者のことを「左褄」ということがありますが、今は はしょり着付け(おはしょりがある)が一般ですが、 芸者や舞妓が また花嫁が裾引き着物を着ます。歩くときに引きずらないように、衿下の部分を持ち上げるのを褄をとる といいます。花魁(おいらん)や遊女は右手でとりますが、芸者や舞妓は、左手で褄を持ちます。長じゅばんの合わせ目が右に、着物の合わせ目が左に着ます。左褄は「芸は売っても身は売らぬ」ということといわれています。(着物の合わせ目の関係お分かりでしょうか?)
花嫁は、少し意味が違いますが右手で褄を持ちます。

男女の間で「ふる」とか「ふられる」とかいわれますが、振袖を着た女性が袖を開いて体をふって「イヤイヤ」をすると袖が前後に振れることから、「振られた」と言ったともいわれています。

最後に・・・着物からきた言葉で「しつけ」という言葉があります。昔はよく使いましたが、最近は硬い感じにとられ、子供に対してはあまり使わず、ペットに使う程度になったような気がします。
「しつけ」は「躾」と書き、身を美しくと言う意味です。そう考えると硬く考えないで、姿も、立居振舞も美しく、人としてのマナーも、できるだけ小さいときに教えて、自然に身につくようにしたいものです。
着物が出来上がったとき、なじませるために「躾」をかけます。この躾は、きつすぎても、緩すぎてもいけません。おばあちゃんの知恵袋とでもいうのでしょうか。着物が仕立てあがるとなじませるために、しばらくは躾をとらないで、箪笥の引き出しの下に入れ、その上に着物を2,3枚入れておくといいとも言われています。


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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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