かざみきもの学院
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<2007年8月>

 

優先順位

 7月8日京都で全国きもの指導者協会の講師試験が行われました。全国から大勢の方が来られます。ずっと以前、私が審査員の一人になりたての頃、どこの地区だったか忘れましたが、母と同じくらいの年齢の方が若い人達と一緒に試験を受けておられました。品のある素敵な女性でした。この方の姿に、逆に私の方が、生きる目標をいただいたような気がしました。試験のたびにこのことを思い出します。
毎年のことながら、今年も前日から京都入りしました。夕方みんなで祇園のあたりをぶらぶらして、八坂神社にお参りをしてから、京料理をいただきました。少しお酒も入ったせいか、みんな明るく自信に満ちた顔をしていました。私のすることはここまでで、後はこまごまと心配はしません。

 当日は、予想通りの出来でほっとしたところで、私は後の審査と会議のために残り、最終便なので、みんなと別れましたが、京都で時間を過ごし、伊丹から同じ便に乗る人が何人か居ました。松山空港でみんなと別れてタクシーに乗り、そろそろマンションも近くなったので、バックの中でキーを捜しました。見つかりません。

 こんなお話、万華鏡に書いても、何の役にも立ちませんが、我ながら面白い心理状態でしたので、万華鏡も夏休みということで、ドジな女のお話と、軽く読んでください。

 私はほとんど毎月群馬と松山を行き来しています。家を出るとき、今度こちらの家に帰るまで不要なキーは、バックに入れないで、かばんの内ポケットに入れる習慣になっています。前日夕方、皆で食事に出るとき、小さいバックに必要なものだけ入れてその他のものをかばんに入れて出かけました。その時点ではかばんは持ち帰る予定でしたが、朝になって急に気が変わり、そのまま送ってしまったのです。

 松山の方はお分かりと思いますが、珈蔵から大黒屋さんまでのあの短い時間に考えたことは、とりあえずもう1泊、ホテルを予約しようと携帯を出して・・・行事等で使うので、松山のだいたいのシティーホテルは電話番号が入っていたので、探していて、はたと気づいたたことが、小雨交じりの中、荷物は全部送ったので、街中のホテルに泊まったら、明日はまた、脱いだこの着物一式を着て、付け下げにすっぴんで出てくる。人に会うかもしれない。そうだ近くのビジネスホテル、・・・場所は知っているけど番号が入っていない、思っている間に大黒屋さんの近くまで来てしまい、左に曲がってもらい道後に入り、あっという間にホテルに着いてしまいました。宿泊は必ず予約を入れて。急に決まったら、ホテルの中からでも電話を入れて、といつもはみんなに言っていたのに・・・。
すぐ前にかの有名な温泉があるのに、近くにおいしいお魚のあるお店も知っているのに、着物を脱いでしまうと何もする気がしなくなりました。

 翌朝、管理人さんが出勤する時間を見計らって、(見回りに行かないように)事情を話して、「5,6分で帰りますから事務所に居てください。」とお願いして開けてもらい、すぐに着替えて午前中の授業に出ました。午後は姉と知人のお見舞いに行く約束をしていました。1時に終わるから1時半に教室の前ということで、出かけました。

 お見舞いを済ませ、高島屋前まで帰ってから、姉が「お昼食べる時間がなかったからお腹空いたでしょう」と言われて、朝も食事をする時間がなかった話をしていて、気がつきました。「あ!昨日の夕食もとっていない・・・」色々なことがあるとお腹が空いているのを感じなかったのです。
 
  何日かしてから、他の用事で姉と電話で話していたとき。「あなたに言っておきたいことがある。」とのこと。「優先順位を間違わないように!」「仕事も大事だけど自分の体は一番に考えないと・・・もう若くないんだから」 と、おまけの一言付きでした。

 人が何かを考えるとき、迷ったとき、それぞれの中で優先順位が決まります。何を1番に持ってくるかの積み重ねが、その人らしさで、その人の生き方になります。
私は、いつも思っていることは、人はどんなに気を付け意識していても、必ず誰かのお世話になったり迷惑をかけたり、助けてもらうことがある。だからできるだけ自分の中で処理できることは自分でして、できるだけ人に迷惑をかけないように と思っています。このことは母の生き方の基本でもありましたし、「約束を守る」と合わせて、小さい頃からいつの間にか学んできたことでもあるように思います。

 今回のことも、スペアキーは、何かのときのために、スタッフの一人に預けています。言えばすぐ来てくれることも分っていましたが、少し離れていることと、私のプライベートルームのキーは持ってないこと、そしてまた、小雨模様の蒸し暑い夜でしたので、少しでも早く落ち着きたかったという気持ちもあり、連絡はしませんでした。

 何事もなく何日かが過ぎましたが、万華鏡に書こうと思ったとき、誰かが先に読んでそこからこのことを知ったら、「どうして言ってくれなかったのですか」と思う人なので、その前に私のドジな話として彼女に話しました。お互いが相手のことを考え過ぎて、すれ違う信頼関係もあるからです。

 荷物が着いていて自分の部屋でゆっくりしたとき、普通のことがこんなにも心地よいものだということに改めて気づきました。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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