かざみきもの学院
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<2008年7月>

 

男のきもの

学院長  7月、夏 浴衣の時期です。かざみ会の色々な催しも男性会員の方が浴衣を着て参加をされるようになりました。ここで、男の着物の注意点を挙げておきたいと思います。
男性も、少し前は、そこそこの年齢の人は、大島やその他の紬やお召しなどを、また若い人も結婚するときに、ウールアンサンブルぐらいは用意して、新婚さんもお正月には二人で着物を着て初詣に行ったりしたものです。

〈 衿 合 わ せ 〉
 そうそう教室を始めてすぐの頃、近所の新婚の奥様が、大晦日の夜訪ねて来られて、「教えていただきたいのですが・・・男の着物は衿合わせを逆にするのですか?」とのこと。まったく考えてもみないことでしたが、洋服は確かに男性と女性、合わせが逆です。それを思うとこんな風に考えることも理解できます。
反対に「左まえ」( 左衽と書き、左を先にあわせること ) は死者の装束、亡くなった人の合わせ方です。もちろん男性女性を問わず、普通は着物は右まえに着ます。
この、合わせに関しては、奈良時代、「右衽の令」が出てからずっとそれに従っていますが、それ以前の埴輪や土偶からは左衽の姿が見られます。中国騎馬民族の習慣である左衽をきらって右衽にしたともいわれます。日本では普通右をプラスに、上に考え、左をマイナス 下に考え表現することが多いようです。右は、「右腕」「右に出る人はいない」「座右の銘」などと使い、左は「左前」(倒産しそう) などと使います。今では左利きの人を何とも思わなくなりましたが、以前は左利きは恥ずかしいといって、子供の頃から親が直させたこともありました。
また、舞台も向かって右を上手 左を下手といいます。

〈 寸 法 〉
  男物と女物の大きな違いは、女物ははしょり着付け、裾を決めて腰紐をし、衿を合わせてもう1本紐を結んでおはしょりを作りますが、男物は対丈で、腰のところで、衿も一緒に一度に決めることです。 ( 身八口 振りのあるなしその他形の違いは別の機会に書きましょう。)
ですから、着方は簡単ですが、寸法がとても大切になります。女物は身長から出していけますが、男物は、実際に計った方が正確です。また、体の厚みにもとられますので、何か着てみて、そこから何センチ長く、短くと決めていくのが間違いありません。

 寸法の話になるといつも思い出します。( 前に何かに書いたかもしれませんが・・・)
以前、毎年舞台の舞踊の着付けを頼まれて、かざみから、舞台メイク 着付で、15人くらいのスタッフが行っていたことがありました。 何があるか分からないので私も毎回行きました。前日の夜、初めての方から電話があり、男着流しを2人を追加で頼まれました。男物は寸法のことが気になるので、ご自分のものか、または衣装合わせをしているかの確認をしたところ、別の人が頼まれて普通の貸衣装屋さんで借りるとのこと。どうせ行くのだから、お受けしたのですが、出番直前ではなく、一度衣装合わせをするので始まる前に来ていただきました。
勘が的中、お二人とも着物が長い、一人はかなり引きずっています。こういうときはひもを2本使って裾、衿をそれぞれ決めて、あまりを帯中に入れて対丈に着せるのですが、帯が普通のものより狭い! 一人は何とかなるけれど、もう一人はとても収まらない。
着物を裏からつまんで縫う方法もあるけれど、着方によって縫い目が細い帯の下にきちんと収まるかどうかは危ない・・・・・・。ふと見ると着物2枚に帯が3本あって、どちらがいいか選んでくださいとのこと。よく見ると2本がこまかい千鳥格子の色違い! ほっとしました。出番までに時間があったので、2本を合わせて縫って広い帯を作成。舞台では少し広い目の帯のほうが映えます。  そんなこんなで無事仕事を終えました。

 もう一つは、講談社発行の「きものと着つけ」の撮影のときです。この仕事は15年くらい続けましたが、はじめの何年かは着物もモデルもこちらが用意しました。男物の着方のとき、夫の会社にハワイから来ている日系3世のイケメンが居て、着物が好きでこのモデルをしたいといっていました。寸法がちょうど同じくらいでしたので、予定していたら、直前に、仕事の都合でハワイに帰ることになりました。さあどうしよう!
出来上がりだけの撮影なら、どうにでもなりますが、着方のプロセスをずっと撮ってそれに説明をつける仕事なのでごまかしがききません。仕方がないので、新しいイケメン探しよりも内容を優先しました。夫の着物で本人がモデルで出ました。自分で着られるので、前日撮影の順序だけ1度打ち合わせをしたら実に簡単にできました。

 2,3年でモデルは男性も女性もプロのモデルになりました。仕上がりだけや、着せ方、帯結びのプロセスは簡単なのですが、着方のところになると、モデルさんは、ワンカット終われば押さえた手を離しパラッと落とし、次のカットはまたそこまで着せて、次の手を決めて持たせて、自分で着るプロセスを撮影します。  
少し脱線しました。男のきものについてでした。

〈 浴 衣 〉
 浴衣はもとは湯帷子といって入浴のときに着た麻の着物でしたが、江戸時代には一般の人も綿の浴衣をお風呂上りに着るようになりました。ですから本来は素肌に着るものです。けれども今は、着る目的が違ってきました。着るためというより人の目を意識する、よりきれいに着ることが第一に求められるようになりました。女性は特に色々な変わり結びや、最近ではひらひらと色々なものを自由につけて楽しんでいるようです。
ここでは男のきものについてですが、やはり同じように、人中に出るときは「かっこよく」が優先されるようです。
またお祭り、花火 などではなく、照明もきちんとしたどこかの会場に夏だから浴衣でという場合や人に着せてもらうときは、下着は薄いランニングシャツとステテコまたはブリーフの上にもう1枚トランクスくらいの気配りをして欲しいと思います。マナーでもありまた下着は汗を吸ってくれます。
帯は、兵児帯でもよく、角帯の場合は 貝の口 神田結び などが一般的ですが、片ばさみ( 浪人結び )も、寄りかかっても崩れにくていいと思います。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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