かざみきもの学院
トップ 学院長 本校 松山校 万華鏡 イベント アルバム

<2011年6月>

 

二人の女性

学院長 5月10日、渡部の母が亡くなりました。満年齢92歳でした。
ゴールデンウイークを群馬で娘と過ごし、6日、松山に帰った日、義弟から、母が病院を変わったこと、大分弱っていることの知らせを受けて、翌日様子を見に行ってきました。落ち着いたように見えましたがそれから3日目でした。
お通夜告別式共、涙雨のような小雨の中、行われました。
お通夜の日の昼間、アルバムを見せていただきましたが、きちんと整理をする人で、昔、私の所から送った子供たちの小さい頃の写真も沢山整理してアルバムに収めてありました。
もっと古いアルバムに、新聞記事の切り抜きが貼ってありました。母が書いた文章でした。当時父が教員時代、ちょうど勤務評定問題で意思を貫き通した時の、妻として取材を受け、母が書いたものでした。当時の教員は皆この問題を知っています。少し年上の私の父も同じ考えでした。

 私は渡部家の長男と結婚して、勤務先の群馬県へ移り、長年そこで過ごしました。
義父が亡くなった時も、仕事が順調にいっているのだから気にしなくていいとの言葉に甘えて、同居の弟夫婦にお願いして、夫も私もお互いの理解の下、それぞれの道を走りました。母はそのことをとても喜んでくれていました。先日お葬式の時に、「捷子さんが着物の仕事をしていることを本当に喜んでいた。本に出た時も嬉しそうに見せてくれた。」と話して下さった方がありました。
入院してからは、度々行けないので手紙をよく書きました。回数書くので、変わったことがないと、手紙が葉書になり、そして絵葉書になりました。

 もう一人、この機会に書いておきたい女性が居ます。義弟のお嫁さんです。学校の先生を勤めあげ、校長にもなった人です。ずっと同居していて、私たちの家族がたまに帰るといつも笑顔で迎えてくれました。他に東京の弟家族、松山の姉家族、多分同じように迎えてあげたと思います。このことを書いていると、出産前の大きいお腹の姿を思い出しました。その頃は、きっと大変だったと思います。

 ずっと思っていることがあります。義父が亡くなった時のことです。父は退職後、教育長現役で、年度替わりの一番忙しかった時で、そのことが終わってほっとした3月でした。この日、どういう理由かははっきり分かりませんが、町葬でした。
外向きの時だったからでしょうか、並び順も焼香順も、実質的には同居の弟が色々な面倒を見て仕切ったのですが、勧められるままに長男とその妻という立場で先に並びました。この時の申し訳ない気持ちは今も続いています。この時から、外向きであってもこの人の前には出ないように、目立たないようにと考え、その後、跡取りと外に出た者を、外部にもきちんとしなければと思い正式に決めました。

 今ではあの時の男の子が立派になって2世帯住宅を新築し仲良く暮らしています。
仕事を全うし、母の手を借りたとは言え、立派に子育てをして、義母を看取り、本当にあらゆることを成し遂げ、今では忙しい時にできなかった趣味の教室に通い、地域のお世話もしています。先日その古い記録の中から、母の若い頃の一面、母もまた地域のために活動していたことが分かったと話してくれました。今では親戚、地域の人達の中でも、堂々とした渡部家の夫婦2本柱になっています。

 身内のことですが、この二人の女性は、私が個人として感謝し、尊敬するだけではなく、女性の生き様としてこうありたいと思える人なので、皆さんに知っていただきたいと思い、また、私自身この時のことを忘れないようにと、今回書きました。
私は着物の道を歩きましたが、着物を通して女性の生き方に最も関心があり、この万華鏡も大きなテーマはそこに置いていますので、この二人のことはどうしても書いておきたいと思いました。

 女性ではありませんが、義弟のことをお話します。2年前、かざみ主催の松山で行われた全国きもの指導者協会総会のショー&パーティーに、弟夫婦を招待しました。年下のお兄さんのような存在でしたが、どこかで夫の代わりに、私の歩いて来た道を見届けてほしいという思いがあったかもしれません。二人で出席してくれました。今回分かったことですが、その時、手術をしてまだ完治していなかった時だったとのことでした。・・・・・感謝すると同時に、この母がこういう人達を産み育ててくれたのだと分かるような気がしました。

 病院に駆けつけた時、母に話しかけると、言葉にはなりませんでしたが、握った手をにぎり返してくれました。

 家に帰って、お通夜の人が集まる前、二人になった時、母の頬に触れて「怖くないから・・。○○さんが連れて行ってくれるからね・・・」と声をかけました。先に逝った息子が今、してあげられるただ一つの親孝行だと思いました。

バックナンバーはこちら

渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
▲このページのTOPへ
©2005 かざみきもの学院