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<2011年7月>

 

断捨離 (だんしゃり) と物のいのち

学院長 物が片づかないというのは万人の悩みの一つです。今、やましたひでこさんの「断捨離」もブームになっています。不要不適不快なものとの関係を断ち、捨て、離れ、引き算の解決法で停滞を取り除き、住まい、暮らし、身体 気持ち、人生の新陳代謝を促すという考え方です
名前はヨガの断業、捨行、離行 からきているとのことです。

 どこの家も物が多いからすっきり整理ができないのは事実です。そこで要るもの要らない物 考え中と3つに分類することから始まるという対処の仕方が一般的です。いずれにせよ、やはり一言でいえば、物が多いということが共通して言えることでしょう。そこで、「断捨離」という言葉が出て来たのだと思います。普通の人もみんなどこか共鳴するところがあります。私もとてもよく分かります。

 一方で、戦後の物がなかった頃は、お母さんたちは、皆、知恵を出して、工夫をして、また、おばあちゃんの知恵をいただきながら、元気な子供を育てました。やがて何でも、手に入り、買っては捨てる、使い捨ての時代が長く続き、何でも求めれば無制限に得られるという錯覚が皆の中でおきていました。私も仕事と子育てで、時間が無かった頃、どんどん物を買い捨てている人でした。

 今度の想定外の震災で、多くの人がそれぞれ何かに気づき真剣に考えていると思います。
使い捨て ばらまき これらは物が、お金が、動くけれど、人に対しても、物に対しても心がありません。人にも物にも必ず存在の理由があります。人が懸命に働き、人とかかわり、いい人生だったと皆に感謝して終わるように、物の一生も、人に役立ち終わらせてあげたいと思うようになりました。

 今は、お掃除その他、便利グッズやそれぞれの洗剤等、次々出てきて、どの家もとても多くの物があります。私も新しく便利なものが出ると試してみたくなり、一度は買う方ですが、最近、掃除や消臭にも重曹と酢等、昔からあるシンプルなものが見直されているようです。

 おばあちゃんの知恵袋としては、玄関、ベランダ等、お茶がらまたは新聞紙を濡らしてちぎり、土や埃を一緒に取る。ほうきにストッキングをかぶせ天井の掃除、箪笥の後ろは針金ハンガーにストッキングをかぶせてほこり取り。(静電気でほこりがつきやすい) 
洗える長襦袢、単衣の着物等は、袖だたみにして、くるくる巻いて、ストッキングに入れて洗濯機で。これは今でもどの洗濯ネットより型崩れせず綺麗になるので使っています。また、不要の布製の物は、切ってウエスにして身近に置き、ちょっとした汚れに使い捨てる。フリースはシンクや蛇口を磨くと何もつけなくてもピカピカになります。エコの面からも身近にあるものの利用を考えてみましょう。

 新聞紙は、昔から防湿 防虫 防臭 汚れ取りに利用されました。コピー用紙のように 表面にコーティング加工をしていないので、吸湿、防臭性に優れていて、畳の下、下駄箱の下に敷く、靴の中へ入れる。生ごみの中へ入れ、吸湿防臭。まな板の上で魚をさばき、そのままくるんで捨てる。野菜をくるんで長持ちさせる。使用済みの油の処理に、牛乳パックに新聞紙を丸めて吸い取らせる等、キッチン周りでも活躍します。私は2種類の大きさに切ってすぐ取り出せるようにキッチンに置いています。
印刷インクの油と水分から汚れ落としになり、窓ふきに利用。また災害、遭難時には、身体に巻いて体温の低下を防ぐ・・・昔から多くのことに利用されました。
だまだ沢山あります。こんな時だからおばあちゃんの知恵を教えてもらって、工夫をしてみてほしいと思います。

 誰かが亡くなると、遺品の整理をする時、着物をごみとして処分するところが多くなっているようです。着物ができるまでにどれだけの人の手を経て、どれだけの時間をかけて来たか、またその人にとっては、どれだけ大切なものであったかを思うと、心が痛みます。
ある朝、テレビで震災にあった方の着物を集めて、洗い、塩を抜き、懸命に直している人達の姿を見ました。京都のNPO法人「着物を着る習慣をつくる協議会」が避難所に浴衣を届けていました。皆さん本当に嬉しそうに選んでおられました。「これを着てお祭り、花火に行きたい・・」この表情を見て、改めて、やはり、日本人はみんな着物が好きなんだ、本能的に好きなんだと思いました。

 また、着物の話になりました。元に戻りましょう。
「物のいのち?そんなことを言っているから片付かないのよ!」と叱られそうですが、

 1 ) 物の定位置を再確認し、同じ物を外に出さない。 
 2 ) 用途別に大きく分類してストック。(あまり細かく分類しない) 
 3 ) 買い物の前にストックの中を確認、時々そのストックの引き出しを見る。
 4 ) 考え中の物を早く決定する。
 5 ) 家の中に開かずの扉、何が入っているか忘れてしまった箱、デッドスペースがないか確 認

 思いきれない人(私も含めて)は、こんなことを実践してみてはいかがでしょうか。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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