かざみきもの学院
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<2012年2月>

 

職人魂

学院長 成人式の着付けをされた方、お疲れさまでした。かざみきもの学院も毎年11月12月は卒業された方も成人式の着付けのある人はみんな講習会に来られます。美容師さんも着付けを頼まれているから、今年は自分でお着付けまでしたいと、熱心に受講されました。当日は、皆がそれぞれの所で着付けをして、「終わりました」とメールが入ります。かざみの着付士ではなく、自分の美容室の仕事でも、メールを下さる方もおられます。

 以前、美容師の方が基本から勉強をして、初めて成人式の着付けをした時、「無事終わりました。人にお着付けをすることがこんなに楽しいとは思いませんでした!」と入りました。その人は卒業後も何か分からないことがあると、電話が来ます。また、別の方で、センスもよく、いい着付けをする人でしたが、12月最後の授業の時、男性の礼装があるのでもう一度 しておきたいと言って来られました。 男性の成人式は何をするかわからない人も居るので、羽織の紐をほどかれたら結べるようにもう一度確認をしました。 やはり心配が的中だったとか。

 松山校開校以来、個人指導を掲げ、できるだけ私も授業に出るようにしてきました。以前補助講師と何人かのインターン生とで大勢一緒に教えていた頃より充実感があります。「一人一人が実際に役に立つように」を第一優先にしていますので、毎週来る人だけでなく、仕事の関係で、月1回 2回の人、急ぐので短期集中の人、事情があって今休んでいるけれど、よく近況を知らせてくれる人、そしてまた、「今東京です。歌舞伎を見に来ました。着物で飛行機に乗りました。」と知らせてくれる人。

 「シミをつけてしまったんですが」と持ってくる人、いただいた着物を何枚か持ってきて「着られますか」という人に、そのまま着られる物、表がきれいで裏がしみだらけの物は裏だけ変えて洗い張りをして仕立て直せば、新しいものと同じようになること、身内の方の思い出のある着物は寸法が足りないので、コートにしたら?と。また、これは汚れが沢山あるので、やめた方がいいなどのアドバイス。
その人の事情、目標、困っていること、あらゆることを受け入れ、着物の良さ、着ることの喜びを感じてほしいとの思いで日々過ごしています。

 昨年の震災以来、みんな何か役に立ちたいとの思いが強くなっているようです。直接その方達のためというだけではなく、広い意味で、「自分のことだけでなく誰かの役に立ちたい」という思いです。
長く着物に携わっている方は、自分の出来ること、好きなことで、誰かの役に立つことを考えてみてほしいと思います。人と人のつながりが生まれ、自分も幸せな気持ちになれます。

 私も、ただ好きから始まり長い間きものに携わってきました。万華鏡にも以前何度も書きましたが、「伝統の着物」「ファッションとしての着物」から第3の着物「女性を外から内から磨き高め、大人の女性を育てる着物」の発見、そして第4の「ぬくもりの着物」に到達しました。
祖母から母へ、母から娘へ、着物を通して人から人へと伝わるぬくもりと、もうひとつ、着物自体のぬくもりです。着物ができるまで、多くの過程をふみ、多くの人の手を経てきます。また、ひと針ひと針仕立ててくれた人、着た後の洗い丁寧なシミ抜き、みんな日本が誇れる職人さんのすばらしい技術と手から生まれるぬくもりです。最近そんなことを特に考えるようになりました。
3月には、着物の町、新潟県 十日町、塩沢方面 見学を計画しています。

 お話は変わりますが、関西系で、「たかじんのそこまで言って委員会」という番組があります。辛坊さん司会で、政治、経済その他の社会問題を、政治家や何人かのパネリストが居て、その時のテーマに合った専門のゲストが分かりやすく説明します。パネリストの突っ込んだ質問に、本当にそこまで言っていいのかということまで出てくる、速いテンポのやりとりが面白く、よく見ています。
先日は特番で、日本で生活している人や、日本のことをよく知っている外国人がパネリストでした。客観的に日本の今の状態をかなり厳しく言っていましたが、最後に全員が、日本の技術は素晴らしい。日本の物なら安心。日本人は素晴らしい。並ぶ文化、決めたことをみんなが守る、だからあんなに正確なダイヤで列車が走れる。などなど・・・・特に中国の人が力を入れて言っていたのが印象的でした。

 日本にはそれぞれの道で代々受け継いできた素晴らしい技術があります。職人さんはそのことに誇りと責任を持っています。ですから手抜きはしません。こういう人たちが日本の物は素晴らしいと世界の人に言わせる基盤を作ってきました。この魂があらゆる物を生産する上でも「安心」を呼んでいるのでしょう。
また、一方で、中国では列車の件、食品の件等、問題が多いようですが、日本もかつては中国から色々なものを学び取り入れ、育てていって現在に至るものが沢山あることを忘れてはいけないと思います。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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