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<2012年9月>

 

家庭科の先生

学院長  日中は厳しい暑さと蝉の声、夜は秋の虫の声、どんなに暑くても夏が行き、秋が来るのを教えてくれます。この夏は、いつもの行事の他に、中学校、技術家庭科の先生の研修会に講師として依頼され、行ってきました。今年から中学校の技術家庭科に和装教育、浴衣着装が入ってきたので、先生達の指導です。これまで色々なところの着付け指導に行きましたが、今回は特に力が入りました。

  着装の順番を教えるだけではなく、この先生方に、私の思いを託したいという気持ちが出てきました。
先生は学校教育のプロであり、生徒たちの一番近くにあって、理解の程度も、興味の程度もよく知っていて、こうすると生徒がどう反応するかある程度予想ができるはずです。また学校での他教科との時間割の関係、男女一緒の授業であること、場所との関連等、現場の事情があるので先生が工夫をしてほしいこと等伝えました。

  その中に考えてほしいこと二つ。一つは、生徒に教える内容だけでなく先生がきれいに着てほしいこと。生徒はいつもと違う先生を見て、「素敵!」「かっこいい!」 中にはドキッとする子もいるかもしれません。知識として頭の中にだけあるのではなく、目から入って、学ぶ意欲が芽生える。すると楽しい授業になる。楽しいことは忘れない。
もう一つは、授業は夏直前に組み込んでほしい。そのまま自分で着ることができる。生きた授業になる。
内容の中に入っている、 「今なぜ和装教育か」 という話も理解していただけたように思います。

  今回、学院で補助講師の話をすると、和装教育国民推進会議の趣旨に賛同し会員になっている人のうち、7人の師範達が希望して手伝ってくれました。仕事を休んでの人もありました。このことは、私にとってうれしいことでした。資格をとってからも研究会に熱心に出席している人達で、着付けはもちろんできるし、浴衣の着方の順番も教えられますが、団体 グループの講習は、その日初めて会う方たちなので、事前にどういうグループか、何を求めておられるのかつかんでおかなければ、短い時間の中でズレができてしまうこと。今回のような場合は、一見初心者のように見えても、専門の勉強はしていて、指導のプロであること、これらを踏まえて、向かわなければいけないことを気付いてほしいと思っていました。何かを感じ取ってくれたと思います。

  昔のことも知っていて、長い間万華鏡を読んで下さっている方からメールをいただきました。
「いよいよというかやっぱりというか、『先生』 の指導に入りましたね。今までの流れからすると一番自然なところに落ち着いたというところでしょうか・・・・・」
当時のことを思うと、両親も兄姉も学校の先生で、私も松山市で家庭科の先生をしていたこともあり、学校教育のこと以外、他の分野の仕事のことは分からないような環境で育った私が、親戚も知人も居ない遠く関東の地で、こんなことを始めた時、姉が不思議がっていました。

  学校の先生になるべく、教育学部に入り、高校でも大学でも、勉強はあまり好きではなかった私が、付属中学で教育実習をしていた頃、自分でも驚くほど燃えていきました。県の採用試験も受け、どこに行くのかと思っていた時、卒論の指導教官から、市内の大きな女子高 (私立) へのお薦めがありそちらに行くことになりました。

  その学校は、家庭科の先生が6人で、一番上の方が、母と同じくらいの年代の素敵な先生でした。指導教官にお話を持って来られたのも、この方だそうです。

  立ち姿も美しく、また、男女年齢を問わず、1年目の私達にも、先生の一人として、接して下さいました。この先生に憧れてよく観察?していました。廊下で別の先生と出会った時、一瞬立ち止まり、片手に出席簿等持ったまま一方の手を前に、笑顔で 「おはようございます」。 丁寧すぎない、けれども凛として美しいこの一瞬の所作を見つけました。
この仕事をするようになって、着物姿での立居振舞の指導の時、必ずこの先生のことを話します。先生にお会いしてから大人の女性への憧れが強くなり、やがてその大人の女性は私の中では着物を着ている人になりました。

  もしこの先生に出会わなければ、県内どこかの学校に居たと思います。きっと教育に燃えたり、挫折したり、起き上がったりしながら、多分勤めあげたと思います。どちらが良かったかは分かりませんが、人の歩く道、一生は、誰にも分からないけれど、実は決まっていて、諸々のきっかけは、その 「みちびき」 であるような気がします。 

  長い年月を経て、また松山で、家庭科の先生の集まりの前に立った時、これまでの外部の講習会とは違う懐かしいような不思議な感覚がありました。
帰ってから、なぜか先生のことが思い出されました。今思うと、先生は優しさと凛とした姿と同時に、女性らしい可愛い部分も合わせて持っておられたので、より素敵だったのだと思います。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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