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<2012年11月>

 

着物姿での動き・写真

学院長  先月の万華鏡では仕事を忘れて、のんびり 「秋を感じに」 でしたが、着物のことに戻りましょう。
ある学院から師範会の人達の勉強会に講師として来てほしいと依頼がありました。そちらの学院長は、着付け、作法 学院経営 連鎖校の指導と、すべてできる方なので、私にできることがあるだろうかと思いましたが、是非にということでしたので、また、受講される方が皆さん師範の方とお聞きして、着物の素晴らしさを広く伝えていってほしいと願っている者にとっては、どこの方であろうと、お伝えしたいことがありましたのでお引き受けしました。

 「着物指導者の役割」 のお話と、先方の御希望でもあった 「着物姿の写真の撮られ方」 の実習をしました。 皆さんとても熱心に、楽しく進めることができました。
そこで今月は、美しい着物姿での動きと、写真の撮られ方のコツを簡単にお話しましょう。
若い頃は写真を撮るのも撮られるのも苦手で、見せるという意識もあまりなかった私も、この仕事をするようになって、より美しい着こなし、着物姿の立居振舞、ショーの時の見せ方など、必要に迫られ、モデルを養成している先生や、色々な方に御指導いただき、自分なりに教えることができるようになりました。

 着こなしの原点は 「まっすぐ立つ」 。横から見て、頭の先から足までまっすぐになっていることです。これは洋服も同じです。私が教わったモデルを養成している方のお話ですが、初めて入ってきた人は、まず、髪を縛って頭の上に上げ、どこから見られてもいいようにして、まっすぐ立つことから始めるとのことです。膝の後ろをおもいきり伸ばし 胸からお臍までの間を伸ばします。 「胃をアバラの中に入れ込むような気持ち」 「息を吸った時の状態」 天井から頭の先を引っ張られる感じ、顎が上がらないように。 そのまま上がった肩を下に戻して、身体の芯は意識して伸ばし、その他の所、表情はリラックス。
首が前に傾き頭が前に出ている人は壁に頭 肩 背中 お尻 足までつけ、(ウエストの所に平手が入るくらいにつける) これを何度かして行くとまっすぐになってきます。

 立っても座っても椅子にかけても、背筋を伸ばすよう意識します。椅子にかける時は、身体を折ってお尻からではなく、背筋を伸ばしてまっすぐ腰をおろします。立つ時も反動をつけず、足に力を入れ胸から立ちます。紹介等で注目されている時は特に気をつけ、浅く掛けていた方がきれいに立てます。椅子に戻る時は、右手が下がったところの上前を目立たないように押さえ、一瞬、左手で膝の後ろの緩み分を裏側に。この一手をかけると掛け姿がきれいになります。

 着こなしとは、 「着・こなす」 ことで、着物を着て自由に動けることから始まります。着物姿の美しさはその動きの中にあります。
着物は、裾、袖口 振り 身八口、最近では衿をきちんと合わせて帯を結びますが、以前はこの衿合わせも含めてみんな開いています。無防備と言った方がありましたが、動きの中でこれらをかばいながら、また、袖等、袂が汚れないようそれぞれ対応しながら動いていくその所作が、着物姿の美しさだと思います。

 着物を着られるようになったら、どんどん写真を撮ってみましょう。今では、素人でもデジカメでいい写真が撮れますし、沢山撮って不要の物を削除でき、PCに取り込み、選んで、ある程度の修正、プリントもできます。
自分で着付けの確認もできますので、全身 前姿 後ろ姿も撮りましょう。背景はあまり意識しないで、明るめの無地感覚の場所がいいでしょう。この時注意する基本的なことは、帯締め、おはしょり 裾の長さの確認。袖の振りは後ろに。

 帯締めが外れていないか下がっていないか、 おはしょりがまっすぐになっているか お太鼓の垂れが上がっていないか、この三つの確認は、写真はもちろん、椅子から立つ時、車から降りた時、行動を始める時等に確認を。着た時はきれいであっても、何かの時に変わることがあるので、私はこれを「3点チェック」と言っています。
  
 人物だけの時は上下の余白は、下を少なく上を多く。膝のあたりや草履の上で切れないように、草履
まで全部入れます。風景も入れる時人物は下の方に。 横や斜めを向く時は中心に置くよりもその人の前側にスペースをとります。顔の表情を狙う時は、上半身 帯から上位がいいでしょう。

《 ポーズをとる 》

☆足の表情  
足の後ろに重心をかけると、ドンと落ち着き、表情が出ないので、前に重心を置くように意識します。片方に重心を置いて片方を添える感じで。少し引いても草履の先は離さないよう、かかとの方を離します。

☆ 手の表情  
お腹を抱えるように平らに組むと休めの姿勢。お腹が出て、背中が丸く 首が前に来ます。 肘を張らないように後ろに引いて。親指を身体につけて小指側を浮かせ、指の先だけを自然に重ねます。この時手の位置が高いと若々しく、落ち着いたミセスのきものの時は下の方で。このあたりはショーのポーズの時と同じです。
両手を自然に下げるだけでもきれいですが、袖の表情も出してみましょう。片方の手を少し上げると袖が出ます。この時反対の手も意識して少しだけ身体から離すと自然な姿になります。また、バック小物等を持つのも効果的です。ただ、帯出しで大きいバックは違和感があります。大きいバックは、道行コート、道中着などを着た方が自然です。

 正面 斜め 後ろ姿、色々撮ってみましょう。斜めは、やや右向きで、左足を少し引くと腰から裾のラインがきれいです。カメラ側にある左側が大きく映りますので、左肩を引いて、 「下半身は斜め、上半身は正面」 を意識します。カメラから上前の半衿が少なく見える時は多めに出します。
後ろ姿も、足を揃えて立つよりは片方の足を少し引いて、頭は後ろを意識し、片方の顔が少し見えるくらいにすると着物の表情が出ます。カメラが見えないと安心して力が抜けるようですが、見られていることを意識し、身体の芯はまっすぐに、首が前に落ちないように気をつけましょう。

 振袖は、袖も含めて全体に華やかに柄がついていますので、全体を見せるポーズで1枚は撮りましょう。ショーでよく使いますが、両手で袖口を持ってにっこり。また、両手で袖口下を持って、手を外側にひねって振りが身体のラインから離れないようまっすぐに。振袖の着こなしはあまりしなやかさの決めポーズよりも、初々しく若さを表現する自然な笑顔が一番です。

 和室でのこの私の写真は、大人の着こなしでよく撮るポーズです。この時は前帯をグッと下げるのがポイントです。

 モデルになった気分で色々撮ってみましょう。複数で撮る時は、一人だけポーズをとるのはやめて、 「全体で絵になるように」 が最優先です。念のため・・・。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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