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<2013年12月>

 

公開講習会を終えて

 11月17日、松山市総合コミュニティセンターでの公開講習会「振袖と大人の着物の着こなし術」が、多数の方のご参加をいただき、終了しました。成人式直前のお嬢さん仲良し5人組も振袖姿で活躍してくれました。

 振袖を着るのに必要なもの、前日確認すること等の後は、着こなしは「着・こなすこと 着物を着て自由に動けることから始まる」として、着付けの後の歩きやすくするコツ、歩き方、走り方 袖の扱い 椅子に掛ける 食事の時 車の乗降 から、手を洗う トイレに行く時等、困っていることを。また、ショールの扱い等簡単なマナーについても具体的に細かく説明実習しました。
そして、前から気になっていた「成人式の意味」について話す機会を得ることができました。これらを御本人とお母さんに知っていただきたくて今回の公開講習会を企画しました。

 また、大人の着こなしでは、「シンプルに、品よく 凛と さりげなく」着ること、「無駄のない動き 所作の中に見る女性の美しさ」について動きのひとつひとつを具体的にお見せしました。草履を履いてのコートの着方 脱ぎ方 たたみ方、着物姿でちょっとした家事をする時の袖の扱い等。私の経験からは、家事をするのは何と言っても袖口にゴムの入っている割烹着。白い割烹着は昭和の物という感覚ですが、おしゃれなロング割烹着もあります。夏は余分なものを着ると暑いので、昔からある方法「襷」を利用しています。

 たたみ方については、着物 長襦袢 振袖 留袖 羽織 コート 帯類等のたたみ方を。
普通の着物を本だたみにするのに対して、振袖は夜着だたみ(大名だたみ)と言いますが、振袖や留袖など豪華なものは、前に箔や立派な刺繍がしてあるのが多く、衽つけ線で折り返す本だたみはそれらを傷つける心配があるからで、その心配のない物は収納の寸法のことも考え、使い分けるのがいいと思います。

 以前師範の一人から聞いたお話ですが、1月の終わりに、友達が、「娘の成人式の振袖、まだ呉服屋さんがたたみに来てくれないの」と言っていたとびっくり。また、会社の中の学園で毎年着付けを教えていた時のこと、1年間終わってある人からのお話です。「最初の時間に着物のたたみ方を教えてもらって、家に帰ってやってみた。お母さんもお兄さんのお嫁さんもできなかったのに自分ができて嬉しかった。」とのこと。
もう一つ、「男のきもの着付け教室」をした時、知人の男性(1級建築士)が風呂敷を抱えてやってきました。お茶を習っているので自分で着たいとのこと。最後にたたみ方をしている時、「ウーン・・・芸術ですね」と一言。職業柄か、あの着物が折目に沿ってたたんでいくと、きれいな平らな長方形になる仕組みに感心し、また、着物をたたんでいる姿は美しいと感心しきり。授業でもたたみ方の所でこの話をよくします。
たためればいいということではなく、あっちこっち動かないで、正座をして、裾側半分からたたみ、ずらせて上半分をたたんでから裾を持って行きます。

 アイロンに関して忘れられないお話があります。大分前ですが、着付けに来られたミセスの方の着物のしわが目立つのでこのままではおかしいと思って、時間もあるようなのでアイロンをかけてあげようと思いましたが、驚いた様子で「アイロンはかけないで下さい!」と。「すぐですから」と言っても、着物にはアイロンをかけないようにと強く言われました。これは多分箔が変質したり、縮緬のしぼが伸びたりするので、お母様からそう言われていたんだと思います。そのままお着せしましたが、今でも、できる限りのいい状態で送り出せなかったことが気になっています。

 着てこそ着物、着物は着るためにあります。私は遠方で大事なお席に出る時はホテルに荷物を送り、その中に必ずアイロンを入れます。余談ですが講談社の撮影の時は着くととにかく助手がアイロンかけです。撮影ではしわや線を特に嫌います。縦の線も全部、肩山袖山の線までとります。一般では残しますが、たたむ時に折り目正しくたたんでいないと余分な線ができ(それはしわと見なします)いつも折り目正しくたたむことがとても大切です。

 着物はずっと昔からありますが、母の時代は着物を縫うのも手入れもみんな自分でしました。箔、刺繍などの入った高級な物、また縮緬やしぼのある物以外は縫い直しをするのに解いて洗って糊をつけて板張りや、ハンモックのような形で乾かす伸子張り等でしました。私は子供の頃から、切ってあるものがきちんと長い板に収まってきれいに仕上がっていくのが不思議でした。今でも訪問着や留袖のような絵羽柄(全体で一つの絵)は買う時は仮仕立てになっていますが、仕立てる前は解き湯のしが必要で、仮仕立ての時の筋消しをします。仕立屋さんには全部をつなぎ合わせて1本の反物になって届きます。
反物の端は別ですが、縦や斜めに切り捨てることなく1枚のきものに仕上げていくことは先人の知恵だと思います。戦後物のない時代、お母さん方が自分の着物をほどいて色々なものに作り直したお話は誰もが知っているかと思います。
今では洗い、シミ抜き、仕立て直し等は専門の所に出した方がいいと思いますが、着物の構成の素晴らしさと、過去にこうして乗り切った人達のことを、着物を通して知ることも意味があると思います。

 今一番願っていることです。
  「着物のことは母から娘へ 教え伝えていってほしい」 「着物を通して母と娘のいい関係を」
今回、もう一つしたいこと、すべきことが見つかり考えていることがあります。  次回1月万華鏡で。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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