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<2014年1月>

 

成人式 母と娘「草」の作法

 明けましておめでとうございます。皆様新しい年を迎えて、昨年のことを考えたり、年の初めに 「今年は・・・」 などと、それぞれ考えておられることと思います。

 松山校を開校して20年になりました。毎月行ったり来たりの生活から、だんだん群馬本校を次女に任せられるようになり、2カ月に1回になりましたが、現在は私と同じ資格をとり、師範研究会もできるようになりましたので、さらに少なくなりました。家族4人がそれぞれのことで忙しく過ごしていても、お正月だけは皆で過ごしましょうというのが我が家のルールでした。時も流れて、それぞれがそれぞれの道を歩き、今年は東京の長女夫婦が松山に来て、初めて松山で新年を迎えました。

 12月の万華鏡の最後に書きましたが、今、考えていることがあります。成人式を前に、早朝からの着付けのことを考えている人も多いと思いますが、私はどうしても 「成人式の意味」 に思いが向かいます。
動物の親は小さい時は大切に守り、やがて自分の力で危険から身を守り、食べ物を自分の力で得られるように、ひとり立ちできるようにと本能的に教えていきます。人間も親の役割は同じです。嬉しいけれどちょっぴり寂しいようですが、大きな節目のひとり立ちの時です。生まれた時からの色々なことを思い出し、特別の思いがあることと思います。この次の本当のたびだち(結婚)までに、母として、もし教えること伝えることがあれば、この機会に考えてみてほしいと思います。

 私が結婚して夫以外に親戚も知人も居ない関東の地へ行くにあたり、世の中の、大人としての常識、地域の習慣等、考えると不安でたまらなかったことを思い出します。
一般には、二人で住んでいる家が狭いのと、着物のことが分からないので、実家に置き、何かの時には母親が選んで、着せてもらうこともあり、冠婚葬祭等のお付き合いもすべて母親に聞くという人が多いようでした。私は遠く離れているだけに頼れる人もなかったので、その頃特に一人前の大人の女性になりたいという願望が強かったのかもしれません。今はネットで何でも調べられますが、やはり私は今でも 「おばあちゃんの知恵袋」 のようなものを大切にしています。

 最近は大学在学中に就活に忙しく、何社も面接を受ける人も多いようです。その時、使ったこともない 「御社の・・・」 などと丁寧な言葉を使うのは、これまでの言葉とあまりにもかけ離れていて、自然体で本音で話すことができないので、ぎこちなく、先方にも伝わりにくいと思います。敬語の使い方で苦労している人が多いようです。敬語は主に相手を高める 「尊敬語」 、と自分のことを謙遜する 「謙譲語」 があります。
文体には、丁寧さの度合いで、常体の 「である」 「・・だ」 に対して 「です・ます体」 「ございます体」 があります。

 作法から見ると、ほとんどのことに丁寧さの度合いで 「真・行・草」 とあります。お辞儀一つにしても 「真礼」 (敬礼) 「行礼」 (普通礼) 「草礼」 (会釈) とあります。襖(ふすま)の開け方にも3種類を学びます。真の動作は、 「中央に正坐して、引手に近いほうの手をかけ5センチほど開け、そのまま手を下ろし中心まで。ここで反対の手でそのまま開け、締めるための手がかりに5センチほど残す」。 茶道を学ぶ人は当たり前のことですが、今では和室のない家もありますので、これは知識として知っておくのでいいかもしれません。大切なことは、少なくとも、廊下から和室に入る時は膝をついて、片方の手で開け、立って入室後正坐をして挨拶をします。省略があっても、基本は、相手が座っている時は座って、 「目の高さを揃えて会話をする」 という原点です。このことはとても大切で、小さい子供と大切な話をする時も、目の高さをそろえ、ゆっくりお話をするのが一番伝わります。

 現代の生活の中では、お辞儀は頭だけを何度も下げるのではなく、日常の挨拶は草礼、心からの感謝の気持ちは行礼、儀式や心からのお詫びは真礼。これだけ知っていれば、大体のことはその人のとっさの判断でできるはずです。
作法は丁寧すぎると失礼にあたる場合があります。相手の立場になって考えることが最も大切です。
仕事によっては、 「ございます体」 が必要になりますが、 「ですます体」 の文を書くことができ、 「真」 の心で 「草」 の動作ができる。この基本を理解していれば、どんなことにも対応できると思います。

 成人式を迎えたことが、母娘共、これらのことについて考えるいい機会になればと思っています。
成人式を迎える方に、家族や仲間内では形は今まで通りでいいけれど、今年から、相手の立場で考える気持ちをもっと豊かに、周りの人に感謝の気持ちを伝えられる勇気を・・・。

 シンガポールに留学している高校生のお嬢さんが、松山に帰っている間にと11月末から着付けを習いに来られました。以前何かの会の時、 「各国の民族衣装を着た人が多かったのに、着物を着ることができなくて悔しかった!」 とのこと。そういう思いがあることと、日数が限られているだけに、本当に熱心に受講して、浴衣はもとより、お母さんに新しく作っていただいた、ピンクの絽の付下に夏帯で、上手に着られるようになり終了しました。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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