かざみきもの学院
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<2014年3月>

 

歩いた道から思う 「否定のことば」

 最近、いいえずっと前から思っていることです。以前関連することは書いたかもしれません。たまたまあるきっかけでまたここに戻りました。

 大分前のことですが、ある方の 「否定のことば」 についてのお話が心に響き、自分でも本当に思うことを加えて、ずっと大切にしています。
「否定のことばを口から出す時は、@その人とかかわりを持つこと、Aそのことばに責任を持つこと、Bその人に前向きのことばであること、C表現は気をつけて」。

 学校教育とは違い、教室は大人が大人を (年上の方も) 教えるということです。講師・師範を養成し、指導法の勉強の中でもこのことは大切に伝えたつもりです。
指導する人に何度も言っていることがあります。入学した方で、別のところで習った方や、習ってはいないけれど、ある程度着られる方もおられます。絶対にその方法を否定しないこと。合わせを反対にする以外、どの方法でも間違いということはありません。着るということに関しては、楽で、簡単で、早く着られ、仕上がりが美しく、着崩れないというだけです。もちろんその上の、立居振舞、季節感、格、寸法と、着付けの関係、母から娘へと伝えていく着物のぬくもり、日本人が日本人であるための着物、先人から受け継がれた着物に関する様々な技術と感性等々、着物の魅力は限りありません。

 私は現代の着付けに流派は必要ないと思っています。かざみきもの学院が所属する全国きもの指導者協会も、高林三郎先生の教えを受け、理論も技術も体感も納得し、この方法で指導をしています。一時期、他の流派とどこがどう違うのか、色々なところに短期で学びました。美容師さんが勉強するところにも行きました。いいと思うことは取り入れています。

 既に着られる方が、入学されるのは、さらにもっと学びたいわけです。一つ一つのポイントやコツを、私が最もいいと思っている方法で理論と実践で進めていくと、とても納得してくださいます。ここには、教える側、教わる側と立場が違いますが、色々な面でお互い学ぶことがあり、気づきもあります。

 ここで思い出したことがあります。お話はガラッと変わります。福島医大病院に、整形外科と心療内科で連携するリエゾン診療を取り入れた大谷晃司医師がおられます。テレビでも何度か取り上げられたようです。私が驚いたのは、家庭の事情で一家の大黒柱として働かなくてはいけない若い男性が原因不明の腰痛に悩まされ、どこの整形外科に行っても分からない。会社にはそのことを言うと辞めさせられるかもしれないと内緒にし、友人と会うことも避け、激痛に苦しんでいた時、大谷医師に出会い、治療(指導)により回復した内容です。

 日記を書くように言われました。毎日、今日あったいやだと思ったことを書き、そのことに対してどう思ったかを短い文で書いていきます。友人からの誘いを断った時のことを 「他に方法はないか?」 との問いかけに、 「別の日を提案」 と前向きの言葉が出ます。 「自分と同じような立場の友人がいたら何と言ってあげるか?」 「励ましのことば」 が出てきます。医師は 「そのことばをそっくりそのままあなた自身に言ってあげるように」。
だんだん前向きのことばに変化していきます。だんだん腰痛が少なくなっていきます。ストレスが体に来ていたことが 改善されました。自己否定によるマイナス思考からプラス思考へと導いた一つの例です。私は、これはすべてのことに言える、とても大切なことと確信していましたが、体にこれだけ顕著に出るとは思いませんでした。納得と驚きです。

 人はどんな人でも、大人になっても弱い部分があります。誰かを悪く言って、誰かの同意を求める。そのことにより仲間ができたと思う。そういう人たちが不本意ながら同じ考えを持つ。そう思ってはいないけれど、一人になるのが怖いからその仲間に入る。これがいじめのパターンです。大人になってもそれで悩んでいる人もおられます。

 今度は自分が否定の言葉を聞いたときのことです。そのまま受け取り落ち込まないように。その人が尊敬できるところがあると思ったときは受け入れる。私のために言ってくれたと思う。そう思わない時、ましてや誰が言っているかも分からない時は、自分を信じて聞かない方がいい。なぜなら、弱い時はその言葉にふりまわされて自分の考えが消えていく。やがて 「そう思われているかもしれない」 「違いない」 「どうせ・・」 「私はだめだ」 になり、自己否定へ 「うつ」 に向かい、なかなかそこから出られなくなることがありとても危険です。

 けれども 「聞かない方がいい」 といった外部からの否定の言葉も、頭の隅に置いておく、すると不思議なもので、後になって、(何年も後かもしれない) 思いもしなかったことだけど、そういう人も、そういう見方もあるのだと気づき、それをヒントに一回り大きく物事を判断できるようになることがあります。それが、大人になってからの成長であり、人と人との間で生きていくことの妙味と言えるかもしれません。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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