かざみきもの学院
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<2014年5月>

 

散歩道

 新緑の美しい季節が今年も忘れずやってきました。毎年感じることですが、葉をすっかり落とし、枯れたように見える木々から新芽が出て、驚くほどの勢いで緑が茂っていく様は本当に力強く、また、薫風とはよく言ったもの、新緑の間を抜けて風が頬に気持ちよく、色々な意味で何かが始まるようで胸が弾みます。

 今年もこの時期、短い期間ですが群馬で過ごしています。近くに「いずみ緑道」という散歩道があります。「日本の道100選」、「歩きたくなる道500選」にも選ばれています。
ここは中島飛行機の工場で生産された飛行機の輸送のための軍需道路として車道ができたそうです。それに沿った、鉄道の線路跡地にいずみ緑道ができました。周りに大きな欅の木をはじめ、色々な木々で囲まれ、大部分の道路が歩行用と自転車用に分かれていて、多くの人が利用しています。

 我が家から出て右に駅の方に向かえば大きく見事な欅並木、左に向かえば、木々のトンネルを抜け体育館、陸橋を越えて進むと、野球場、サッカー場等の運動公園。その先は利根川、ここを渡れば埼玉県です。

 ほとんどの万華鏡のテーマは散歩中に決まります。私は万華鏡を毎月書いていますが、毎回その時その時、思ったことを書きます。着物のことであったり、女性の生き方であったり、教育問題、日本という国のことであったり、私の失敗談であったり、全体の関連性はありません。初めはかざみきもの学院、渡部としての内容が多かったと思います。卒業生の方や、気持ちはあるのに健康やお家の都合で続けられなかった人にも読んでほしいという願望もあります。悩んでいることを知っていて、その人ひとりのことを考えながら、踏み込まないように、でも見てほしいと願い、皆さんへ向けての普通の文で書くこともあります。

 以前、ずっと読んで下さっている方から、「本を出したら・・」と、何人かに勧められたことがあります。けれども私はお断りしてきました。普通、文は、実例を挙げ具体的に表現する方が分かりやすく面白いものです。充分気を付けているつもりでも、具体的になると、誰かの心を傷つけることがあるものです。ですから、そのつもりはありません。ここに書くことにより、一人でも見て、何かを感じ取って下されば、いいと思っています。
文字は残ります。私自身歳を重ねることにより、物事のとらえ方、考え方、感じ方、表現の仕方も変わってきています。これは自分がどう生きてきたかの記録にもなります。娘たちが、何年かして、母がどういう人だったか分かる部分があるかもしれません。

 最近時々姉と1泊の小旅行をします。姉は義兄と全国各地観光旅行に行っていますが、義兄他界後、私とのんびり旅行をするのを楽しみにしてくれています。先日、山口県岩国の錦帯橋へ行ってきました。露天風呂の後のお酒の入った食事の時も、今回は特に母の話が多かったように思います。

 子供の頃、雨の日は外で遊べないからと必ずお菓子を作ってくれた。誰かが久しぶりに帰る時は家中の電気をつけて迎えてくれた。それぞれが子供を持ってからは仕事と子育てでいっぱいで、本気で母の立場で考えることもなかった。母の口癖だった 「してあげられる間がいいのよ」 「大丈夫、私は不死身だから・・」 。前に出ることもなく、家族を守り、何でも頼めばしてくれる、助けてくれる。本当に不死身だと思っていた。みんなの面倒を見て、自分は誰の世話にもならず逝った。何もしてあげられなかったことの心残り・・・。今思うとそれが母の望む生き方だったのかもしれない。自分の道を見事に生き抜き、逝った母・・・。非日常の場所での母の話に、お酒も進んで私はダウン。

 今朝、この道を歩きながら、このことを思い出しました。

  

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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