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<2014年9月>

 

四国遍路お接待と代行ビジネス

 8月、松山から群馬へ移動のため松山空港へ向かうタクシーで、運転手さんとの会話の中、旅行からお遍路の話になり、最近は車で廻る人が多くなったこと、高齢者の方がタクシーで行く人もよくあって、ある時、長い石段の前で、お客様から 「自分は行けないのでかわりにお参りしてきてほしい」 とのこと、石段の下に車とお客様を残して上ったことがあり、この時は自分でも本当に大変だったけれど喜んでいただいたというお話もしてくれました。そんな中で、いいお話を聞きました。運転手さんのお子さんの学校で、校区の中に2か所札所 (お寺) があるので、子どもたちがお接待体験をしているそうです。

 四国の人はもちろんですが、ほかの地域の方も、お遍路とお接待のことはご存知の方も多いと思います。昔から、四国のお遍路さんはお大師様 (弘法大師 空海) と同じ、仏様と同じという考えで、道中お遍路休憩所 (遍路小屋) で、飲み物 お菓子 果物 路銀などをお接待として差し上げ、また一宿のお世話をするところもありました。お遍路さんは尊い人で、労をねぎらい、お接待をさせていただくという昔かからの考えが今も受け継がれ、特に学校や地域の人たちが、このことを大切にしようと積極的に取り組んでいるところも多いようです。受けた人も、物だけではなく、言葉で温まり、声掛けで気持ちが励まされ、両方がいい気持になれる。今必要なのはこういうことかもしれません。

 ここで思い出しました。金比羅さんの代参犬 「こんぴら狗(イヌ)」 です。江戸時代、気軽な旅はご法度でしたが、神社仏閣へのお参りは許されていました。一生に一度は行きたいと人気があったのは、伊勢神宮 と京都東西本願寺 そして讃岐の金比羅さん。ところが昔のことなので日数もかかりなかなか本人が行くことができず、他の人が代わりにする代参です。代参といえば、清水次郎長親分の代参、森の石松はご存知の方が多いと思います。それが人だけではなく飼い犬だったりします。飼い主の名前を書いた木札 初穂料 旅中の食費などが入った、巾着袋を首にかけ、袋に 「金比羅参り」 と書いてあるので、皆が世話をして、人の絆で金比羅さんまで来られました。このお話は2年前、2012年10月 「秋を感じに」 に書いています。ちょうど石段の途中にある 「こんぴら狗(イヌ)」 の写真も撮ってきました。

 代行といえば、高齢者の健康の面で行けない人を、タクシーで行き、お世話をしながら一緒にお墓参りすることもあり、お墓に行くこともできない人に頼まれて、お墓参り代行をすることもあるとのことです。タクシーの運転手さんのお話を伺いながら、今度の9月の万華鏡はこのことを書こうと思っていました。

 群馬から松山に帰り、しばらくしてもう一つ代行の話がありました。それは 「謝罪代行」 。2,3日してさらにもう一つ、夏休みの終わりの 「夏休み宿題代行」 のお話です。いわゆる代行ビジネスです。これには驚きました。 『読書感想文1枚 2〜3,000円、自由研究 5,000円〜、絵・ポスター 20,000円〜、ドリル1冊 5,000円〜』 と表示しているところもあります。 こんなことがあっていいのか。こういうビジネスをする側にも問題はあると思います。尾木ママこと教育評論家尾木直樹氏が、 「子どもに詐欺の正当性を教え、お金で何でもできるという歪んだ価値観を教えることになる。子供の学力を奪う」 と怒っておられました。このことがテレビに出て、批判的な意見が多かったですが、一方、知らなかったお母さんたちが関心を持ち、 「空いた時間で塾や受験勉強に専念できるのでやらせたい」 という人たちも出てきたそうです。このことにまたびっくり! 親の側も 「心をどこかに置いて、何でもごまかしで、その場を繕おうとする大人になるように子供を育てている」 ことであって、私は、このことは 「わざわざお金を払って、 『人として一番大切なもの』 を捨てさせている」 としか思えません。

 「四国遍路のお接待」 と 「謝罪代行」 「宿題代行」 ・・・。子どもは皆 「善」 。子ども達の持っているきれいな心を自然に見守り育てていくことも、摘み取ることも、大人の責任と改めて思いました。大人になるにつれて、多くの人と出会い、感動や挫折等色々なことを経験する中で、色々なことを感じ取り、愛と誇りをもって自分の足でまっすぐ立てる人になれることを祈ります。

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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