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<2014年11月>

 

白秋そして赤秋

 先日高校(松山)の同期会が東京で行われました。東京はもとより、松山から、関西から、70人ほどの集まりでした。これまでもよく開かれていましたが、私は群馬で仕事と子育てに追われていた頃は、出席することもなく、むしろ考える余裕もなかったといっていいと思います。多分一部の人以外は私の存在も忘れていたと思います。

 ある時東京方面の集まりがあり出席した時、懐かしく、とても温かいものがあり、このことを万華鏡にも書きました。「青い春と白い秋」(2006年3月)それを誰かが見つけて、すぐに何人かの人に伝わり、それから東京組からお声がかかり時々参加するようになりました。

 今回の集まりは品川で行われ、この日は前日が松山から群馬への移動日と決まっていましたので、連泊にし、前夜は東京の長女を呼んで、ゆっくり過ごしました。当日お昼すぎ出かけようと思った時、軽いめまいと貧血があり、そのままホテルで休んでいました。大した事でもないので、みんなが心配するといけないので、出席し、途中で静かに部屋に帰ろうと思っていました。ところがなんということか、受付で引いた席札が一番前の中央テーブルの前側、司会席から遠い側、ここは一番上の席、主賓の席に当たります。もちろんこういう会ですから来賓もなく、皆同じ席なのですが、ただ、入り口が遠くて帰りにくく、そのまま色々な人と話していたら、不思議なことにすっかり治っていました。それだけ温かく居心地がよく、体調も直してくれるほどだったのかと思いました。
(もしかしたら、普通しないほどの3時間の昼寝、熟睡がよかったのかもしれませんが・・・) 

 本当に長い間お会いしていない人も、女性はすぐに 「あ…捷子さん!」  高校時代はあまり話したこともない男性が、穏やかで優しい表情に。見てなかった人に万華鏡のことを話してくれる人もありました。みんなそれぞれ色々なことを経験し、色々なことを乗り越え、それぞれ堂々と自分の道を歩いてきた自信と、どんな人も受け入れる優しさが感じられました。

 翌日はあいにく雨模様で寒い日でしたが、それぞれ分かれて東京の人の案内で楽しんだようですが、私は、今回は群馬での短い滞在の中、予定があったのでまっすぐ帰りました。

 4・5日して、万華鏡の原稿をと思ってパソコンに向かってその時のことを考えていたら、なぜか 「赤秋」 という言葉を思い出しました。人の一生を季節にたとえた 「青春」 「朱夏」 「白秋」 「玄冬」 はご存知の方も多いと思いますが、 「赤秋」 これは、俳優仲代達矢氏の奥様で、脚本家 舞台監督 女優でもあり、 「無名塾」 の創始者、同志ともいえる宮崎恭子さんの言葉ですが、奥様が亡くなられた後、悲しみと喪失を仲代さんはこの言葉で表現しておられました。 「白秋」 この時期に、朱夏の赤とはまた違う赤、夕日が周りを赤く染めて沈んでいく様が見えます。

 先日、万華鏡をずっと読んで下さっている同期の一人から、 「初めの頃と最近の文は、変わってきたように思う」 と言われました。どう変わったか聞いていないのですが、2005年からですので、歳を重ねれば、感じ方も表現も内容も変わってくるはずと私も思っています。よく考えると、以前は指導者であるために夢中で学び、背伸びをして、上から目線で伝えていたのではと思います。また、家族のことや、自分の失敗談等、あまり出しませんでしたが、気負いが取れて、素になれたのだと思います。

 以前はそれぞれクラスの担当講師を付け、それが順調に回るようにと、皆の上に居て、まとめ、指導する形でした。けれども今は、できるだけ私が直接 (もちろん別講師の協力あり) 指導する体制になりました。一人ひとりの希望やそれぞれの事情を理解してその人に合ったカリキュラムを作り、進めています。事情を把握しているので、直前の変更も受け入れます。

 時々生徒さんどれくらいいますかと聞くが方あります。毎週来ている人もあり、毎月研究会に来る人もあり、資格を取って卒業した中で、成人式や特別の着付けの前、1か月 2か月と受講する人もあります。 「行きたいんです!」 という人に、お子さんの様子を聞いて、「子どもにはいつもべったりはいけないけど、求めている時はその時が大事、 『後で・・』 はだめだから、優先順位一番に、まっすぐ向かってあげて」 と休んでもらっている人もあり、どこまでが生徒か、何人いるのか分かりません。私は指導者の目から母の目になったのかもしれません。

 元々事業欲も名誉欲もなく、ただひたすらに走ってきた中で、養成もして、それぞれが活躍できるようになった今だから分かる、今だからできること、これが私の一番したいことだったように思います。

 周りを真っ赤に染めるほどの夕日でなくていい。これが私の 「白い秋」 の中の 「赤い秋」。


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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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