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<2016年11月>

 

『自立』 経験すること 信じること 自分を知ること

 先月の万華鏡で、宮島行のお話を少しだけ書きましたが、他に大切なことがあったので別の話になりました。ここで続きを書くことにしました。広島のホテルから直接出る船に乗って宮島へ着きました。土曜日の午後だったからかもしれませんが、着いたところから 「人・人・人・・・」 その中に 「鹿・鹿・・」 やっと厳島神社にと思ったら、そこにも長い行列。以前姉と行った時とは全く違っていました。夜はホテルで予約をしていた海の見えるレストランでの食事はやはりいい感じでした。ゆっくり進むコースだったので、食事を終えて部屋に入ると私は連日の寝不足とお酒のせいでダウン。早々にベッドに入りました。
 
 ここからが今回のお話です。夜型の東京の長女夫婦は、ちょうど広島がリーグ優勝で歓喜で湧いている街中へ (特にファンでもないのに)。山やスキーが大好きな人と結婚した次女の朝型夫婦はあまり興味がないようで無理に合わせることもなく。
我が家は 「合わせることと、すべて無理に合わせることなく思うままに」 という考えで、お互い無駄に気を遣うこともなく、自然体で過ごしています。

  今思うと、子供たちに小さい時からきめ細かく心配りをしただろうかと聞かれたら、そうではないと思います。けれども母として怠けていたとは思いません。

 長女は3歳からピアノを習っていました。大好きで、ずっと長く続けました。親としては次女にも同じ機会をと考え、次女にもピアノを始めさせましたが、あまり好きではなく、やめたい様子でした。姉妹でもそれぞれ個性があり、私はやめてもいいと思っていました。大切なことはやめ方です。小学校1・2年生だったと思います。 「よく考えてね」 と言っておいたら、ある日学校から帰ると一番に、 「よく考えたんだけどやめようと思う」 との答え。小さな子供なのに、大人びた表現だったことを覚えています。こうして本人の意思でやめたことは、次女も今になっても覚えているようです。

 次女は縫物が好きで、自分の希望で服飾系の短大へ入りました。1年は寮生活、次の1年は、長女がすでに東京にいましたが、別に部屋を借りて一人生活をすることを勧めました。寮生活では、決まりもあり、自分の思うままにできないことも経験をし、一人生活では、すべて自由だけれど、自分が考え動かなければ何も始まらないという経験をしたのです。

 その後、姉妹二人で住むための部屋を借りることになりました。長女は、その頃から自立しているつもりで、自分の方は援助もいらないと言っていました。部屋は自分達で探しましたが、気に入った部屋を見つけても、借りることができません。そして父親の名義で、また、東京在住の父親の弟を保証人にお願いして、借りることができたのです。そうなることは分かっていたので、事前に教えるのが親かもしれませんが、この経験で、自分が頑張ってもどうにもならない世の中の仕組み、決まり等があることを強く意識したと思います。長女は結婚後、夫の会社立ち上げを助け、こういう諸々のことはとても詳しく、今では私が教えてもらっています。

 「したいことが見つかれば勉強は何歳からでもできる」 私が違う道に入り、何度も東京へ通いながら実感したことでした。色々経験しているほど違う道でも役に立ちます。

 次女はその後美容学校へ。続いて1年インターンをして、次に和裁専門学校へ入りました。卒業後はかざみの仕事をしながら、ちょうどその時退職された和裁の先生の、東京の個人のお宅へ通い、引き続きお世話になりました。
色々な方面の、何人もの先生方の教えを受け、母親がこの仕事で大事にしていることも分かってきたようでした。今では、本校は次女に任せ、私は松山校中心に動けるようになりました。

 思い出しました。我が家はそれぞれの仕事を理解し応援していました。その意味では恵まれていたと思います。いつも一緒に居られるわけではないので、「毎年新年はみんな揃って迎える」 という約束事がありました。次女が美容室のインターンの時は、大晦日遅くまで仕事があるとのこと。それではと、皆で東京のホテルで次女を待ち、無事揃って新年を迎えたことがありました。

 子供の将来のことへのかかわり方は、その子の前にレールを敷くことでもなく、ましてや、歩きやすいように、汚れないよう長い絨毯を敷くことでもなく、自分の夢を子供に託すことでもなく、「その子の人生は生まれた時から丸ごとその子のもの」 と思っています。

 親の役割は、子供の自立 経験すること 気づくこと 自分を信じ 周りの人を信じること。

 残念ながら、こんな時代だから、信じて良いこと・悪いことがあることを知っていなければ、生きていけないのも事実です。親のできることは、本人が自分を知ること、自分の中にあるものに気づくための下地作りかもしれません。


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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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