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<2016年12月>

 

外国人から日本を知る

 先日、偶然テレビで外国人の若い男性が日本の人達に鋏の説明をしている姿を見ました。
日本の伝統、大阪堺刃物、創業150年、鋏鍛冶 「佐助」 の見習い、エリック シュバリエという人で、弟子をとらない五代目平川氏のただ一人の弟子ということです。大学時代日本文化を学び、その後日本の民宿で働き、平川氏との出会いは、「佐助」 がフランスで個展を企画した時に、チラシの翻訳をしたのがきっかけとのこと。
一日の過ごし方を見ても、親方が仕事をする 1時間前に仕事場の掃除、準備をし、親方が動きやすいように考えて動く。その中で見て覚える。それはまさに日本人が師匠について修行している姿でした。仕事を終えると、余った鉄で鋏づくりをしていると、弟子はとらないはずの親方がアドバイスをしてくれる。
彼は外国人の自分にできることを考え、修行体験をブログで発信。ブログは反響を呼び多くの見学者があり伝統文化の架橋になっています。

 番組の終わりの彼のお話の中で、 「この日本の伝統を世界の人に知ってもらいたい」 「日本の人にも知ってもらいたい」 と言った最後の言葉が耳に残っています。日本の本当の良さを日本人が気付かず、外国人から教わることが最近特に多くなったように思います。

 そのことと関連するのは最近知り合った、日本のことが大好きなドイツ人男性のことです。着付けを習いに来ている大学生の女性がお付き合いをしている方で、着物もお花もお茶も日本のことを何でも知りたい、とても熱心な方です。
日本で働いていましたが、今月結婚して来春彼女が卒業すると二人でドイツに帰る (行く) そうです。この夏、学院の 「夏のつどい」 に二人で浴衣を着て出席して下さるということなので、ミニショーの中で、男性の帯結びを何種か披露することになりました。モデルをお願いして、事前に一度教室までお越しいただいて確認をしました。その時着物のたたみ方を教えると、とてもきれいに、(女性よりも!) 折り目正しくたたむ様子を見て、感心しました。
着物のたたむ順番を知っていても、折り目通りにたたまないと別の線やしわができるので注意をしなければいけません。一般の着付けは折り目正しい縦の線はそのまま着ることができます。(出版物で使う特別の撮影では、見えるところだけきれいであればいいので、モデルに合わせて余分は後ろでつまんだりすることもあるため縦線もすべての線を消します)
折り目正しいは礼儀正しい意味に使われたりします。

 着物に例えて表現する言葉を少しあげることにします。これは大分前の万華鏡にも書きましたが、日本のことを何でも知りたい彼のためと、日本のことをもっと知ってほしい若い女性のためにあげてみます。現在日常の生活では使わなくなった言葉もありますが、芝居の台詞や歌の歌詞、または年配の方の手紙等に使われることもあります。いずれにしても知識として知っておくことをお勧めします。

@ 「衿を正す」 ・・ 気持ちを引き締めて物事に当たる態度
A 「胸襟を開く」 ・・ 心中を隠さずにうちとける
B 「袖の下」 ・・ 賄賂(わいろ)、心づけ
C 「袖にする」 ・・ ないがしろにする
D 「袖を濡らす」 ・・ 涙を流して泣く
E 「袖を絞る」 ・・ 涙に濡れた袖を絞るほど泣く、とても悲しい
F 「袖にすがる」 ・・ 憐れみを乞う
G 「ない袖は振れぬ」 ・・ ないものは出したくても出しようがない
H 「袂(たもと)を分かつ」 ・・ 今まで一緒だった人と関係を断ち、それぞれ別を行く
I 「帯に短し 襷(たすき)に長し」 ・・ 物事が中途半端で役に立たない

まだまだありますがこのあたりで。

 群馬で着付け教室を始めた初期の頃から、ご主人が転勤で外国へ行くことが決まり、一緒に行く奥様が、 「日数があまりないけど、着物を着られるように何とかしてください」 と、これまで何人かの方の個人特別指導をしたことがあります。

 日本では色々な職種によって、例えば落語家の弟子は師匠の着付けの手伝いをします。着なれた方は、後ろから肩に掛けてもらうと前で片方の衿をもってすぐに反対の手を通して着ていきます。足袋は履きやすいように半分に折ってそろえておくのが決まりでしたが、今では成人式の着付けでは、ネイルアートの長い爪で、足袋を自分で履けないお嬢さんが多いようです。昨年の成人式の着付けの時、大勢着付けなければいけないので、足袋を履きやすいように半分に折ってそろえていたら、スリッパを履くように前半分だけ入れたままの人のことが先日教室で話題になりました。

 以前は外国に憧れ日本の良さに気づいていない人も多かったと思いますが、最近では日本の製品・食品なら安心と言うような時代になりました。そうは言っても、一方では、まだまだ日本の良さが分からなくて、外国人から教わることも多くなったと言えるかもしれません。
観光で多くの外国の方が来られるようになりました。経済から見るとありがたいことで、色々な面でそちらに力を入れています。そんな中でも、伝統を受け継ぐ方々、妥協しない職人の心意気 職人魂は、その方だけではなく日本の誇りであると改めて思います。


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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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