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<2017年7月>

 

『着物』 決まり事と、着る人のための着付けの工夫

 6月衣替えの時期にと思って用意していた内容が、入院で感じたことを先にと思い、差し替えて、こちらが7月になってしまいました。ご心配いただいた皆様ありがとうございました。万華鏡に書いたので、大分前の生徒さんからも久しぶりにご心配のメールをいただきました。おかげさまで、もうすっかり良くなりました。ありがとうございました。

 世界の情勢も大きく変わりつつある昨今、地球の温暖化等により、日本の四季も以前とは少し変わってきました。季節の移り変わりを大切にしてきた日本も、これまでのようにはいかなくなりました。季節の花も野菜も、進歩した技術のおかげで、求めれば、いつでも見られ手に入るようになりましたが、季節感を大事にする人には、そのことは認めながらも別の面から少々気になるところです。私は、日本の四季の移り変わりを大切に思っています。花も、「珍しい」とか「豪華」というよりは、平凡な花でも季節を感じるもの、庭で咲いた花を摘んで、花器を選び、その場の邪魔をしないように、さりげなく生けるのが好きです。

 前置きが長くなりましたが、今月は着物のお話です。学校や会社等、制服のあるところは、6月1日、10月1日に、一斉に夏服に、冬服にと、衣替えをしました。現在では、暑さ寒さによる移行期間がある所や、中間に着るベスト姿もあるようです。着物も季節を大切にしますので、やはり、6月1日と10月1日に衣替えをすることになっています。詳しく言うと、それまで着ていた袷の着物(裏に胴裏八掛)から 6月1日より単衣になりますが、6月は透けない単衣、7月・8月は盛夏の着物と言って透け感のある、見るからに涼しそうな夏物になります。夏が終わると逆に 9月は透けない単衣、10月1日は衣替えで袷の着物と決まっていました。
けれども着る側からいうと、このとおりでは暑く感じることが多く、季節先取りと、半月早く、5月中旬には透けない単衣、長じゅばんは袖単衣を、6月中旬には絽を着る人が多くなりました。暑い日が多くなったこの頃では、逆に秋に向かう時は季節先取りすると大変です。9月10月と透けない単衣、袷の着物と守っていくと暑くてたまらないということもあります。
以前、厳しい決まりを守り、汗だくで着ている方にお会いしたことがあります。季節感、衣替えを考えるなら、色で表現するとそれらしくなります。春から夏に向かう時は薄い色、秋に向かうには、単衣でいいから濃い色を。こんなことを考え工夫するのも着物を着る楽しみでもあります。

 長襦袢は、以前は袷が多かったように思いますが、私の時代今はほとんど、胴抜き単衣で袖だけが袷になっている袖無双です。これは、着物も長襦袢も、単衣よりも重みがあり、着物の袖底となじみやすく、また、着物は袖口も大きく開いていて、手の動きによって内側が見えることもあるので、布の表の色や柄が見えるため、そのことも計算して長襦袢の色柄を楽しむ人もいます。透けない単衣の着物には一枚の袖で軽さ涼しさ優先、盛夏の着物には、絽を中心に夏生地を。透けるので着物の邪魔をしないように、そしてまた涼しさを重視し、ほとんど白が使われます。
長襦袢もまた、着る人の工夫があります。裏がなく 1枚では、長く着ると、座ったりすることにより、しわになったり、お尻の部分で背縫いが弱くなるので、胴抜きで、後ろ身頃だけ腰から下に裏を張る方法がいいと思います。特に盛夏の着物は透けるので、後ろだけ。(前は左右2枚重なるので透けにくいので裏を張らない)

 以前よりも暑さが早くやってくるようになったこの頃、快適に過ごすため、私が実践し、皆さんに勧めているのは、単純ですが、長襦袢を一足早く夏物にすることです。5月に着ることもあります。ただ以前からある 6月1日の衣替えは大切にしています。この日から着物は透けない単衣ですが、帯や小物 半衿も夏物(絽)になります。暑い時は 5月にも着ますが 6月1日衣替えの日には半衿だけ付け替えます。着物に関係しない方はこんなこと どっちでもと言われる方もあると思いますが・・・

 もう一つ、「決まり事と、経験からの工夫」を挙げてみます。留袖の比翼についてです。
20年以上前、知人のお嬢さんが結婚することになり、当日お家の方の着付けをすることになりました。お母さんと妹さん、そしておばあちゃんの 3人でしたが、おばあちゃんが小柄で細い方で、大分腰が曲がっておられて、比翼の付いた重い留袖で大丈夫か心配になりました。着付けをする時は体をまっすぐにされるのですが、すぐに背中が丸くなり、上前の褄が長くなるので踏んで転んではいけないと思い、短めに仕上げました。その頃からずっと考えていることですが、着付けをする人にも、自己満足ではなく、その方の立場になって一番いいと思う方法ですることをこの例をあげてお話ししています。

 また、年齢・体調等で比翼の着物を重く感じるけれど、それでも留袖をという、着物を大切にしている方が多い中で、事前に比翼を付けない仕立てで、白い重ね衿だけという方法も考えてみる等、地球温暖化、着るものにこだわる高齢者が多くなってきたこと、その他諸々の現状からみても、改めて考える時期に来ていて、着物も、もっと自由に快適に着られるようにと変わっていくことと思います。

バックナンバーはこちら (毎月5日更新)

渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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