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<2007年10月>

 

季節を感じる感性と演出

学院長  先日、異業種の勉強会の後、数人で食事をしたときのことです。私の仕事から着物の話になり、日本文化の話になりました。その日の講師の講演後の数人のときのお話ですが、「あるとき、各国の若い人と話をしていて、それぞれの国の文化その他、特徴、誇れるものは何かというとき、他の国の人は話すのだけど、その若い日本人は話すことがなかったというお話がありました。その方は、日本人が、自国の文化やその他、日本のことをもっと知って誇りを持って欲しいというお話のように思いました。

 このことに関連して、私が感じたことは、日本の素晴らしさは、何と言っても四季があることだと思いました。これは、特別、文化とか言わなくても、それぞれの衣・食・住、ごく自然に生活の中に入っている、春夏秋冬を、快適に生きていくための対処の仕方であったり、また、そこから生まれる四季折々の演出だったりします。

 食では、旬のものを素材とし、お店では特に季節感のあるものを季節先取りで出します。和食のお店では、寒さが残る頃に、小さなつくしを添えて、それを見て、春がそこまで来ていることを感じます。住でも、夏には夏のしつらえがあり、衣では衣替えという習慣もあります。

 7月の万華鏡にも書きましたが、6月1日、10月1日のそれぞれの制服がぱっと変わる光景もまた素敵なものがありますが、今年のような気候では、これまで通りというわけにはいきません。

 きものの話になりますが、先日、ある人から、9月1日にお茶会があって、「9月だから、夏物ではなく透けない単衣を着たのですが暑くてたまらなかった」というお話を聞きました。また、一方では、知人が先輩に、9月末にあるお茶会で、「季節は先取りしなくては・・・もちろん袷ですよ。」といわれたお話もありました。

 夏に向かうときに、季節先取りで、半月早めに変えていくのは、本人も、見る人も、さわやかで暑くなくていいのですが、暑さの残る9月に、無理に、汗だくで季節先取りはどうでしょう。普通、暑さが残れば白露の頃までは絽を着ます。また今年のように特別に暑いときは、透けない夏物(濃い色)をもっと長く着ていいでしょう。こだわる場合は、着物は色や柄を秋らしいものにして、帯から秋物に入っていけばいいと思います。

 大切なことは、着る人が快適であることが一番です。今では、結婚式など、夏でも袷の着物を着ることも多いようです。ほとんど冷暖房されていますので、それはそれで否定することではなく、いいと思います。

 地球温暖化で、年々変化していますので、季節感が薄くなったことは事実です。色々な方面の研究がなされ、夏でも冬の着物を着、夏野菜もどの季節でも食べられるようになりました。家の夏のしつらえもほとんどの家はなくなりました。けれども、季節にこだわり、大切にしている人は素敵です。それも、決まりごとに束縛されるのではなく、肌から感じることです。忙しい人も、街中からはなれ、自然の中で風から季節を感じる時を作ることを忘れないようにしましょう。

 今ではこう言わなくてはいけなくなりました。「季節は意識して感じ取り、そして演出しましょう。」

 日本には季節を表す美しい言葉があります。中国から来たものですが、手紙の時候の挨拶の言葉や暑中見舞いの時期などにも出てきます。また冬至にゆず湯をとか、かぼちゃを食べるといいなど、日本の生活の中に入り込んでいます。実際の寒暖とはずれている部分もありますが、「暦の上では・・・」などという表現をします、参考までに、あげておきます。余談ですが、私は「白露」という言葉が好きです。

立春
(2月4日) 節分の翌日 春が始まる
雨水
(2月19日) 水ぬるみ、草木の芽が出る
啓蟄
(3月6日) 冬ごもりの虫が姿を現す
春分
(3月21日) 太陽が真東から出て真西に沈む
清明
(4月5日) 天地がすがすがしく明るい空気に満ちている
穀雨
(4月20日) 穀物を育てる雨が降るころ 
立夏
(5月5日) 夏の始まり 
小満
(5月21日) 草木が茂って地に満ち溢れる
芒種
(6月6日) 穀物の種をまくころ
夏至
(6月21日) 昼が最も長く、夜が最も短い
小暑
(7月7日) この頃から暑さが強くなる
大暑
(7月23日) 1年で最も暑い 
立秋
(8月7日) 秋が始まる
処暑
(8月23日) 暑さが落ち着く
白露
(9月8日) 白く光って見える露、秋の気配を感じ始める
秋分
(9月23日) 秋の彼岸の中日太陽が真東から出て真西に沈む
寒露
(10月8日) 霜になりそうな冷たい露
霜降
(10月23日) 霜が降り始める
立冬
(11月7日) 冬の始まり
小雪
(11月22日) 雪が降り始める
大雪
(12月7日) 激しく降る雪、大雪
冬至
(12月22日) 1年中で最も昼が短く夜が長い 
小寒
(1月5日) このころから 寒さが厳しくなる
大寒
(1月20日) 1年のうちもっとも寒さが厳しい

 ※二十四節気(日付は大体 年によって変動)

 

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渡部捷子

渡部捷子へのメールは watanabe@kazami.com まで

 
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